以前に『宮沢賢治とサハリン』という記事でご紹介した素敵な本の著者、藤原浩さんからご連絡をいただきました。
このたび、藤原さんも立案に関わって、H.I.S.という旅行会社が今年の9月、「宮沢賢治の軌跡を辿るサハリン5日間」というツアーを企画しているのだそうです。
出発は、9月6日と13日の2コース。5日間で13万8000円。6日出発便には、藤原さんも同行されるのだそうです。
今回は特に「宮沢賢治」に焦点を当てたツアーなので、その行程は、「とにかく『賢治が行った場所』『行ったかもしれない場所』に絞っています。それ以外のところは、たとえ人気スポットであっても足を伸ばしておりません。」(藤原氏)とのこと。そして日本語のガイド付きで、「オホーツク挽歌」の栄浜や白鳥湖など、宮沢賢治ゆかりのある6ヶ所を巡るのだそうです。
それから今回のツアーのもう一つの意義は、往復ともに賢治がサハリンへ渡った「稚泊連絡船」に相当する「稚内―コルサコフ航路」を利用するのですが、この「稚内―コルサコフ航路」は今年度一杯で廃止になる可能性がかなり高いのだそうです。
すると、「宗谷挽歌」の世界を直接体験できるのは、今回が最後のチャンスということになるかもしれないわけですね。
賢治が前年に亡くなったトシの魂を追い求め、「銀河鉄道の夜」のインスピレーションの一つの源泉にもなったと言われるサハリン。この、北の最果ての地を一度訪れてみたいという方にとっては、大きなチャンスだと思います。ツアーの最少催行人数は、10名とのこと。
私も行きたくて行きたくて仕方がないのですが、どうしても仕事を休めない・・・(泣)。
ところで、サハリンへ行かれる方にも、行かれない方にも、藤原浩著『宮沢賢治とサハリン』は、サハリンにおける賢治の足跡や、彼の推定旅行日程、サハリンの風物の豊富な写真も載っていて600円という、とても魅力的でお買い得なブックレットです。
実用的なガイドブックとしても、座右に置いて眺めるためにも、お奨め!
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【参考エントリ】
・「オホーツク挽歌」詩群
・『宮沢賢治とサハリン』
・「宗谷〔二〕」の紳士は貴族院議員?
・西洋料理店のような?
・冥界としてのサハリン
・7日乗船説と9日乗船説(1)
・7日乗船説と9日乗船説(2)
・7日乗船説と9日乗船説(3)
mishimahiroshi
まったく関係のない話です。
先日、ターミナルケアに関わっていた独居老人が静かに息を引き取りました。
朝、娘さんが訪問したらこと切れていたのです。
この方は戦後、サハリンに抑留されていました。
シベリアのような悲惨なことはなかった、もう一度行ってみたいとおっしゃっていました。
もし魂というものがあるなら、このツアーに同行させて上げたいと夢想しています。
そしてもっと色々お話を聞いておけばよかったと、亡くなったあと、痛感しています。
hamagaki
mishimahiroshi 様、コメントをありがとうございます。
サハリンで生活しておられて、突然に日本の敗戦を迎えられたのでしょうか。その後きっと大変なご苦労をされたと思いますが、それでも「もう一度行ってみたい」とおっしゃるのは、「故郷」を思うお気持ちなのでしょうかね。
同じようにサハリンで暮らしていて、戦後2年余りも彼の地で抑留されていたという、松田静偲という人の短歌に、次のようなのを見つけました。
奪われし我が故郷の樺太に
玟瑰いまも朱き実もつや 静偲
合掌。