第2回イーハトーブ・プロジェクトin京都

 4月に行った「第1回イーハトーブ・プロジェクトin京都」に続いて、来たる9月4日(日)の午後6時から、京都市左京区の法然院にて、震災復興支援企画「第2回イーハトーブ・プロジェクトin京都」を開催します!

 今回は、現代の新作能「光の素足」を、作者である能楽師(観世流シテ方)の中所宜夫さんに、「能楽らいぶ」という形式で上演していただきます。この能は題名からお察しのとおり、賢治の童話「ひかりの素足」を下敷きとして、その「後日譚」という趣向で創作されたものです。

 下画像は、第1回よりもグレードアップした、今回のチラシです。クリックすると拡大表示されます。

「第2回イーハトーブ・プロジェクトin京都」チラシ表

「第2回イーハトーブ・プロジェクトin京都」チラシ裏

 私は中所さんの能「光の素足」を、昨年の暮れに国立能楽堂で初めて拝見しました。
 その冒頭は、「ダーダーダーダーダースコダーダー」という地謡に乗って、若い舞い手が激しく舞う場面から始まります。以下、『光の素足(謡本)』収載の「あらすじ」から・・・。

 舞台は、とある山里近くの山中。ひとりの少年が剣舞を舞っている。その舞には勢いがあり、吹き抜ける風と響きあって、あたりの空気を揺るがすようである。舞が一段落した時、ひとりの老人が少年に言葉をかける。山人の姿をしており、相当な高齢にもかかわらず、背筋は伸び足腰もしっかりしている。二人は言葉を交わし、少年は自分の抱えている悩みを山人に打ち明ける。他の誰からも理解してもらえない自分の問題を、何故か山人はわかってくれそうな気がしたのだ。
 山人は、少年の苦しみは自分で解決しなければならないと説き、今夜この場所にひとりでやってきたなら、その手助けをしてあげようと言って、姿を消す。
 夜、再び少年がその場所へやってくると、にわかに白い光に包まれて、童子の姿をした「光の素足」が現れる。その人は、少年にさまざまな言葉を語り、最後に、今の苦しみは必ず将来の大きな力となるのだと言い残して姿を消す。

 昨年末に、私が初めてこの能を観た時の印象は、「現代能「光の素足」」という記事をご参照下さい。
 東日本大震災の後というこの時期に、肉親の死という物語を後ろに背負ったこの能を演じていただくことには、私なりの思いもあります。ただ、もともと中所さんは、「賢治の精神世界を能舞台上に再現する」ことを目ざしてこの能を創作されたということで、まず何より一人でも多くの方とともに、その幽幻として奥深い世界を共有できたら、と考えております。

 今回の公演は、「能舞台」ではなく、法然院の本堂で行われます。地謡も囃子もなく、中所宜夫さんが能装束や面も付けずに一人で舞い、謡われるという形で、これは中所さんが以前からさまざまな会場で実施しておられる「能楽らいぶ」という様式です。
 終了後には、不肖私が中所さんと対談させていただき、この能がいかに誕生したのかという経緯、また賢治への思いなどを伺いたいと思っています。

 参加費は2000円で、これは「第1回」と同じく被災地への義援金とさせていただきます。参加ご希望の方は、当サイト管理人あてメールか、または電話 075-256-3759 (アートステージ567:受付12時~18時,月曜休)までお申し込み下さい。

 下の写真は、一昨日に訪ねてきた法然院山門です。法然上人が鎌倉時代に念仏の別行を修した草庵に由来する法然院は、京都東山の麓の深い林に抱かれるように、ひっそりと佇んでいるお寺です。ぜひ、初秋の京都へお越し下さいませ。

法然院山門

【謝辞】
 今回の催しのために、平素は公開されていない「本堂」の使用を快くご許可いただいた、法然院貫主・梶田真章様のご厚意には、ここにあらためて心より感謝を申し上げます。
 従来より、梶田貫主様は「法然院サンガ」という形で、法然院という由緒ある宗教空間を、さまざまな社会・芸術活動のために提供し、また環境保護活動を主宰してこられました。東日本大震災の後も、先頭に立って救援活動を繰り広げておられます。そのようなご縁のおかげで、今回の企画を、またとない場所で開催させていただける運びとなりました。

 また、油絵作品「白い人2」を、チラシの原画として使用することをお許しいただいた、埼玉県在住の画家・鈴木広美さんに、厚く御礼を申し上げます。この絵は、外見的には能舞台とは異なっているものの、その精神において、賢治作品や能「光の素足」の世界と深く通ずるものを個人的に感じたため、お願いして今回の企画広報のために使わせていただいているものです。