「歌曲の部屋~後世作曲家篇」に、鈴木輝昭作曲の『童声(女声)合唱とピアノのためのイーハトーヴ組曲』の終曲「ポラーノの広場(全曲)」をアップして、podcast にも載せました。
これまで同組曲からは、「第一曲 星めぐりの歌」と「第四曲 十力の金剛石」の演奏を作成してアップしていました。「第六曲 ポラーノの広場」に関しては、終結部のコラール部分のみの演奏を収録していましたが、今回その全曲を作成したわけです。
鈴木氏のこの曲は、賢治の「ポランの広場」の歌詞と、「ポラーノの広場のうた」の歌詞とを二つ合体させて生まれた合唱曲ですが、それにしても終結部の「ポラーノの広場のうた」の部分に鈴木氏が付けた曲は、賢治の詩がかもし出すイメージと一体となって、ほんとうに美しいものです。一方、前半部の無調で書かれた「ポランの広場」の部分からは、なんかヨーロッパの古い街並を眺めているような、エキゾチックな雰囲気も漂ってきます。
歌は例によって VOCALOID の Meiko、ピアノは Roland SC-8850 の Piano1 です。
下記のリンクからは、直接 MP3 をお聴きいただけます。
<歌詞>つめくさの花の 咲く晩に
ポランの広場の 夏まつり
ポランの広場の 夏のまつり
酒を呑まずに 水を呑む
そんなやつらが でかけて来ると
ポランの広場も 朝になる
ポランの広場も 白ぱっくれる。
つめくさの花の かほる夜は
ポランの広場の 夏まつり
ポランの広場の 夏のまつり
酒くせのわるい 山猫が
黄いろのシャツで出かけてくると
ポランの広場に 雨がふる
ポランの広場に 雨が落ちる。
つめくさのはなの 終る夜は
ポランの広場の 秋まつり
ポランの広場の 秋のまつり
水をのまずに酒を呑む
そんなやつらが威張ってゐると
ポランの広場の 夜が明けぬ
ポランの広場も 朝にならぬ。
つめくさの花のしぼむ夜は
ポランの広場の秋まつり
ポランの広場の秋のまつり
酒くせの悪い山猫は
黄いろのシャツで遠くへ遁げて
ポランの広場は 朝になる、
ポランの広場は 夜が明ける
つめくさ灯ともす 夜のひろば
むかしのラルゴを うたひかはし
雲をもどよもし 夜風にわすれて
とりいれまぢかに 年ようれぬ
まさしきねがひに いさかふとも
銀河のかなたに ともにわらひ
なべてのなやみを たきゞともしつゝ
はえある世界を ともにつくらん
風童
すてきな映像と音楽に感動しました!
時を忘れてながめています・・
toyoda
いつもHP楽しませてもらっています。
「けさの六時ころ ワルトラワラの」のJ.E.スピルマン作曲の「Flow Gently, Sweet Afton」、「つめくさの花の咲く晩に」の原曲「In the good old summer time」といい、佐藤泰平氏が明らかにしてくれた、原曲のメロディのイメージが、「ポランの広場」に
鮮やかなイメージをつけてくれました。賢治はこの作品での選曲の着眼点のすばらしさから賢治特有の音楽に対するカンの良さに改めて驚いたことを思い出します。
最後のところに「いづれのときかは」の賛美歌がそのメロディと知った時は、感動しました。
レオーノキューストが、輪転機が回る騒音が聞こえる中で「一つの厚い紙へ刷ってみんなで手に持って歌へるやうにした楽譜」を受けとり、その楽譜を見てきっと彼の心に暖かい旋律が浮かんだことと思います。鈴木氏の作品も心に浮かぶ暖かいメロディを彷彿させ、このシーンにまさにピッタリですね。鈴木氏のイメージした「ポランの広場」を感じさせます。
hamagaki
>風童さま
今後ともよろしくお願い申し上げます。
>toyoda さま
いつもありがとうございます。
このあたり、賢治作品に出てくる音楽を追究した佐藤泰平氏のお仕事のおかげで、私たちはほんとうに「ポランの広場」のイメージを生き生きとふくらませることができるようになりました。
レオーノキューストの「孤独」と、「ポラーノの広場のうた」で歌われる「友愛」の対照が、このお話の最後の美しさですね。