「ちゃんがちゃがうまこ連作」歌碑

1.テキスト

ちやんがちやがうまこ
        宮 澤 賢 治 自 筆

夜明げには
まだ間あるのに
下のはし
ちやんがちゃがうまこ見さ出はたひと。

ほんのぴゃこ
夜明げがゞった雲のいろ
ちゃんがちゃがうまこ 橋渡て來る。

いしょけめに
ちゃがちゃがうまこはせでげば
夜明げの為が
泣くだぁぃよな氣もす。

下のはし
ちゃがちゃがうまこ見さ出はた
みんなのながさ
おどともまざり。

       宮沢賢治詩碑建立実行委員会
              平成十一年一月吉日

2.出典

歌稿〔B〕 537~540

3.建立/除幕日

1999年(平成11年)1月吉日 建立/4月29日 除幕

4.所在地

盛岡市大沢川原一丁目 下の橋畔



5.碑について

 賢治が盛岡高等農林学校三年の時、弟と一緒に下宿していたという家の跡に、この碑はあります。碑の隣には、この家で賢治が使っていたという井戸も、「賢治清水」と名づけられて残っています(下写真)。

 「チャグチャグ馬コ」とは、馬の守護神である滝沢村の蒼前神社に、盛岡近郊の馬を、年に一度着飾らせて参らせるというお祭りです。当日は夜明け前から、馬につけた鈴の音が「チャグチャグ」と響き、多くの人が道端に見物に出ます。
 なかでも、賢治の下宿のあった下の橋近辺では、すでに江戸時代から馬の神様への「投げ銭」もおこなわれていたとのことで、ここはいわば「チャグチャグ馬コ観光」の名所でした。

 歌碑になっているのは、賢治が弟と一緒にこのお祭りを見た時に詠んだ連作短歌です。
 賢治の方言短歌と言えば、童話「鹿踊りのはじまり」のなかの、鹿たちの歌が何といっても印象的ですが、こちら の連作にも素朴な味があります。
 賢治は後年にも、種馬検査で集まる馬を見るために、夜通し歩いて外山種畜場まで行ったりするほどで(「七五 北上山地の春」など)、馬はかなり好きだったのでしょう。
 この一連の歌からも、心を躍らせて馬を見ている様子が、伝わってきます。


「賢治清水」