公開講座とテレビ番組

 盛岡の佐藤竜一さんから、賢治に関するお知らせをいただきました。

 一つは、来たる5月16日(日)に、「柳田國男とエスペラント―国際語の理想に魅かれた岩手の先人たち」と題した公開講座が、盛岡で開かれるとのことです。
 柳田國男が佐々木喜善からの聞き書きをもとに『遠野物語』を著し、聚精堂から350部を自費出版したのは、1910年(明治43年)6月のことでした。今年はそれから100周年にあたるというので、この講座も「遠野物語出版100年記念」と銘打たれています。新渡戸稲造、宮澤賢治、佐々木喜善、柳田國男という、当時の岩手に生きたあるいは関わった4人の先人が、図らずもエスペランティストであったことから、今回の企画が生まれたようです。
 講師は、現在は岩手大学で教鞭もとられる佐藤竜一さんと、昨年の宮沢賢治賞奨励賞受賞の岡村民夫さん。

【日時】 2010年5月16日(日) 14:00ー16:30

【講演】 「新渡戸稲造と宮澤賢治―エスペラントをめぐって」
      岩手大学特別講師 佐藤竜一氏
      
      「ジュネーヴの柳田國男―エスペラントと方言のあいだで」
      法政大学教授 岡村民夫氏

【会場】 岩手県立大学アイーナキャンパス 学習室1
      いわて県民情報交流センター(アイーナ)7階
      (盛岡駅西口 徒歩4分)

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 もう一つ、放映日はまだ確定ではないようですが、予定では5月12日(水)に、NHKの「歴史秘話ヒストリア」という番組で、「宮沢賢治」がテーマとして取り上げられるそうです。
 私のところにも2月頃に、NHK大阪放送局の方からメールで賢治に関する簡単な情報照会があったのですが、佐藤竜一さんのところには撮影クルー4名が来て、インタビューを収録していかれたのだそうです。『宮澤賢治 あるサラリーマンの生と死』(集英社新書)の著者である佐藤さんは、東北砕石工場の営業マンとして奔走した晩年の賢治について話をされたとのこと。別の方から Twitter で教えていただいた情報では、東北砕石工場跡のそばに建てられている「太陽と風の家」にも撮影に来たそうで、この辺の話が番組の一つの焦点になるのでしょう。
 「歴史秘話ヒストリア」のページで正式に予告が出るのは、おそらく4月16日とのことですので、念のためご確認下さい。

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井上ひさし (著)

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◇          ◇

 さて、上にそれぞれの話題の関連本を載せましたが、本日、劇作家・小説家・放送作家の井上ひさしさんの訃報に接しました。
 生涯にわたって賢治を愛していた井上ひさしさんが、国民学校6年の時に人生で最初に買った本は、中央公論社発行の『どんぐりと山猫』だったということです。

 読み終えたとき、わたしはぽかんとしていた。そうか、そうだったのかと感心し、それでぽかんとしていた。その町は山とほとんど接しており、わたしたちは日課のように裏山へ出かけて行き、枝を渡る風の音や、草のそよぐ音や、滝の音を頭のどこかで聞きながら遊んでいた。しかし、それまでわたしたちは、風が「どう」という音で吹き、草が風にそよぐときは「ざわざわ」で、くりの実は「ぱらぱら」と落ち、きのこが「どつてこどつてこ」と生え並び、どんぐりのびっしりとなっているさまを音にすれば、それは塩がはぜるときの「パチパチ」と共通だ、とは知らなかった。
 加えてわたしたちは、秋の、晴れた日の山のすがたを<なんともいえずいいものだ、とても気分がいいものだ>とは思っていたが、その気分を「まはりの山は、みんなたつた今できたばかりのやうに、うるうるともりあがつて、まつ青な空の下にならんでゐました」と、しっかりコトバでとらえられるとは思っていなかった。<なんともいえずいいもの>だからなんともいえない、つまりコトバではつかまえられないのだ、と考えていた。しかし、ここに、わたしたちがなんといっていいかわからなかったものに、ちゃんとコトバを与えている人がいる。(『宮澤賢治に聞く』より)

 井上ひさしさんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

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