「青森挽歌」において、《ヘツケル博士!/わたくしがそのありがたい証明の/任にあたつてもよろしうございます》という言葉で登場する「ヘッケル博士」なる人物が、ドイツの生物学者 Ernst Heinrich Häckel (1834-1919:右写真)のことだということは、賢治研究者のあいだでも異論はないようです。
エルンスト・ハインリヒ・ヘッケルは、政府の法律家の息子として1834年にポツダムで生まれました。ヴュルツブルク、ベルリン、ウィーンで医学を修め、1858年に医師の資格を取って、父親の意向もありベルリンで開業しました。
しかし彼の本来の関心は、臨床医学にはなかったようです。まもなく彼は、医者をやめてイェナ大学に行き、当時の偉大な解剖学者であるカール・ゲーゲンバウアーのもとで動物学を学びました。早くも1862年に、ヘッケルは同大学の比較解剖学の教授に、1865年には動物学研究所の所長に就任しています。
生物学研究者としてのヘッケルの活動は、まず無脊椎動物の解剖学からスタートしました。とりわけ、放散虫類、石灰海綿類、クラゲに関する詳細な形態学的研究は他の学者の追随を許さないもので、例えば放散虫に関して1887年に彼が刊行したモノグラフは、彼自身が描いた140もの図版を載せ、何と4000種もの新種を収録したものでした。
1860年代から1880年代までに発表された解剖学におけるこれらの業績は、それだけでも卓越した学者の一生分の仕事と言えるものでしたが、彼はさらに「理論生物学」的分野においても、活発な著述活動を行っていきます。[つづく]
ごち
いつも楽しみに読んでおります。
「青森挽歌」は、いつ読んでも心に突き刺さるものを感じます。
言葉の全ての意味が分からなくても、そういう所は間違いなく読み手に印象付けるのが、賢治の文章の力なのだと感じます。
ヘッケル博士について、続きが楽しみです。
ところで、賢治の詩に作曲した人物・・浜垣様が記念すべき70人目!?
hamagaki
ごちさん、こんにちは。コメントをありがとうございます。
ごちさんのサイト my SketchBook も拝見しました! ほんとうに素晴らしい星空の写真は、まさに「星めぐりの歌」にぴったりですね。
これからも、いろいろなアプローチを楽しみにしています。
さて、「青森挽歌」はまさに心に突き刺さるような、ぎりぎりの葛藤が込められたような作品だと私も思います。その深い意味を把握するのはまだまだ私には無理ですが、なんとかして、ぐるぐるまわりをめぐりながらでも、中心に近づいていけないものかと思っています。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。