鈴木輝昭作曲「ポラーノの広場」

 あけましておめでとうございます。旧年中は、さまざまなコメントをいただきましてありがとうございました。
 相変わらずコロナ禍は猖獗を極めていますが、いつかまたみんなで安心してイーハトーブの地を訪ねられる日が来ることを、願っています。

 さて、年末に続いて鈴木輝昭氏の「イーハトーヴ組曲」から、今日は終曲「ポラーノの広場」の改訂版です。

童声(女声)合唱とピアノのための「ポラーノの広場」(鈴木輝昭作曲)

つめくさの花の  咲く晩に
ポランの広場の  夏まつり
ポランの広場の  夏のまつり
酒を呑まずに   水を呑む
そんなやつらが  でかけて来ると
ポランの広場も  朝になる
ポランの広場も  白ぱっくれる。

つめくさの花の  かほる夜は
ポランの広場の  夏まつり
ポランの広場の  夏のまつり
酒くせのわるい  山猫が
黄いろのシャツで 出かけてゐると
ポランの広場に  雨がふる
ポランの広場に  雨が落ちる。

つめくさのはなの 終る夜は
ポランの広場の  秋まつり
ポランの広場の  秋のまつり
水をのまずに   酒を呑む
そんなやつらが  威張ってゐると
ポランの広場の  夜が明けぬ
ポランの広場も  朝にならぬ。

つめくさの花の  しぼむ夜は
ポランの広場の  秋まつり
ポランの広場の  秋のまつり
酒くせの悪い   山猫は
黄いろのシャツで 遠くへ遁げて
ポランの広場は  朝になる、
ポランの広場は  夜が明ける

つめくさ灯ともす 夜のひろば
むかしのラルゴを うたひかはし
雲をもどよもし  夜風にわすれて
とりいれまぢかに 年ようれぬ

まさしきねがひに いさかふとも
銀河のかなたに  ともにわらひ
なべてのなやみを たきゞともしつゝ
はえある世界を  ともにつくらん

 やはりこの曲も、賢治の童話の中に出てくる「歌」が順番に並ぶ形で構成されています。最初から聴いていくと、映画のエンドロールで物語のいくつかの場面が回想されるように、ポラーノ広場でファゼーロたちや山猫博士が繰り広げたドラマが、目に浮かんできます。

 鈴木氏の音楽では、ピアノ伴奏のエキゾチックな響きが印象的で、私は何となく安野光雅の絵本に出てくるヨーロッパ中世の街並みなどを連想しました。
 そして、何といってもこの曲で美しいのは、最後の「つめくさ灯ともす 夜のひろば……」のコラールですね。賢治自身は、この部分の歌詞に讃美歌の曲を付けて「ポラーノの広場のうた」として歌っていたようですし、林光氏の作曲による「ポラーノの広場のうた」もあります。それぞれがそれぞれに、魅力的です。

 ピアノはやはり Ivory II の Steinway なのですが、プログラムを"Chapel Concert"という設定にしてみました。