大阪コレギウム・ムジクム演奏会(その一)

 先日ご紹介した、「大阪コレギウム・ムジクム」による合唱コンサート「宮沢賢治の世界 その一」を聴きに行ってきました。

 「世界初演」だった、千原 英喜作曲の「混声合唱とピアノのための組曲「雨ニモマケズ」は、I 告別(1)、II 告別(2)、III 野の師父、IV 雨ニモマケズ、という四楽章構成になっていて、平易な調性音楽で書かれた親しみやすいものでした。最後に作曲者も登壇して拍手に応えられましたが、その願いのとおり、今後全国のアマチュア合唱団のレパートリーの一つになっていくような曲だろうと思います。
 CD作成のための録音をしているということで、会場には独特の緊張感が漂っていましたが、聴衆の皆さんの反応も非常に好意的で暖かなものでした。

 指揮をした当間修一氏は、特に初期バロックの作曲家ハインリヒ・シュッツの研究や演奏活動において著明な業績を上げておられる方ですが、今夜のプログラムに、ご自身の賢治に対する思いを、次のように書いておられました。

 私が魅了される「宮澤賢治」、第一には、≪熱く、うごめく思い≫でしょう。賢治は行動します。居ても立ってもいられない思いに駆られて彼は進みます。この熱い思いは彼の骨幹です。第二は≪弱者に眼差しを向けるヒューマニズム≫。彼の生涯は、「尽くし」の生き方でした。育て、養い、援助はほぼ無報酬的な、自己犠牲も顧みない行為にもとづくものでした。第三は≪言葉の音(おん)の魅力、そしてリズム≫。これは彼の心の底から沸き立つ「言霊(ことだま)」としての魅力です。
 そして最大に私が魅了されるわけは彼の特異な≪自然との交感力≫です。彼ほど「自然界」と溶け合い、同一に戯れ、喜んだ人間は希有でしょう。

 まさに、そのような「熱い」賢治理解に基づいた演奏・歌声でした。

 次の「宮沢賢治の世界 その二」は、10月27日に大阪いずみホールです。

 大阪コレギウム・ムジクム「宮沢賢治の世界 その一」

[ 今夜のプログラムから ]
・ 高田 三郎 「水汲み」
・ 鈴木 輝昭 「イーハトーヴ組曲」より