花巻へ

5月3日スポーツ紙

 スポーツ新聞の並ぶ新幹線ホームから10時06分に「のぞみ」に乗り込んで、お昼すぎに東京で乗り換え、新花巻駅はいったん通り過ぎて、盛岡から田沢湖線経由で小岩井駅に降りたのは、午後4時すぎでした。車中では本ばかり読んでいたのですが、窓の外はほんとうによい天気です。

 今日まず小岩井駅までやって来たのは、先日もここに書いたように、つい10日ほど前にこの駅前に新たな賢治詩碑ができたからです。
「小岩井農場」詩碑 賢治が「つつましく肩をすぼめた停車場」と書いた駅舎を出ると、すぐ目の前に詩碑は建っていました。右写真は、碑面に小岩井駅舎の写りこんだ詩碑の様子です。

汽車からおりたひとたちは
さつきたくさんあつたのだが
みんな丘かげの茶褐部落や
繋(つなぎ)あたりへ往くらしい
西にまがつて見えなくなつた

 『春と修羅』の「小岩井農場」からとられた碑文は、1922年5月21日の昼前にこの駅を降りた人々の動向を描いています。この碑は、今年の「賢治生誕110周年」を記念して、「小岩井自治会」と「まちづくり推進委員会」が建立したということですね。
 この作品の詩碑は、農場そのものの中に建てられた碑に続いて、二つめだと思います。

 駅前の景色は、おそらく当時の面影もなく変わってしまっているのだろうと思いますが、岡澤敏男『賢治歩行詩考』によれば、現在の商店街にある「キャメルマートたぬま」や「工藤輪店」などは、昔の伝統を引き継いでいるようです。
 このあたりの事柄については、今日撮った写真とともに、またいずれご紹介したいと思います。

 田沢湖線上り列車までの時間は20分ほどでしたので、あとは駅の跨線橋から岩手山の姿を撮影して、また16時38分に盛岡行きの列車に乗りました。このあたりは、これまでも何度か訪れていますが、私としては今までで最もきれいに岩手山の姿を見ることができました。

小岩井駅から岩手山

 盛岡から東北本線で花巻に引き返し、ホテルに荷物を下ろすと、夜の食事には「風耿」というお店へ行きました。
 この「風耿」というのは、「菊花品評会」句碑のページにも書いたように、宮澤賢治が生前に使っていた「俳号」の一つです。

風耿「浜焼きコース」 賢治生家にもほど近い双葉町で、「海旬野趣料理」という看板を掲げているこの店は、全国の地酒や焼酎、エーデルワイン、各種一品料理とともに、三陸産の海の幸を各自が炭火で焼きながら食べるという「浜焼き」コース(右写真)を売りにしています。とりわけ、サザエ、ホッキ貝、ホタテ貝、ハマグリ、牡蠣などの貝類が豊富で、「貝好き」の方にはこたえられないでしょうね。
 左手前の桶の中にあるのは、「風耿」というオリジナルブランドの付いた生酒です。久しぶりにいただいたエーデルワインでは、2年前の大迫町のことも思い出しました。
 また座敷席の壁には、宮澤清六さんの揮毫による「原体剣舞連」の一節の色紙も飾られています。

「原体剣舞連」より