「小岩井農場」詩碑

1.テキスト


すみやかなすみやかな万法流転のなかに

小岩井のきれいな野はらや牧場の標本が

いかにも確かに継起するといふことが

どんなに新鮮な奇蹟だらう

            宮沢賢治

2.出典

小岩井農場」(『春と修羅 〔第一集〕』)より

3.建立/除幕日

2001年(平成13年)11月11日 建立/除幕

4.所在地

岩手県岩手郡雫石町丸谷地36番地1 小岩井農場展示資料館裏

5.碑について

 岩手山の南麓に広がる小岩井農場には、その昔に賢治の目に映ったであろう景観が、今もたくさん残されています。現代の私たちも、ここでは当時の風景の一コマとなって、それにまるごとひたることができます。

 右写真(上)の「牝牛舎」は1897年築、右写真(下)の「四号牛舎」は1908年築ということで、賢治が「小岩井農場」を書いた1922年5月21日にも、これらは「育牛部の畜舎」として、彼の目に入ったでしょう。
 そして、冒頭の詩碑の写真で碑面に映りこんでいる「一号サイロ」「二号サイロ」は、それぞれ1907年と1908年に建てられました。晩年に作られた「塔中秘事」のもとになった出来事は、このどちらかが舞台だったのかもしれません。

 それにしても、このすみやかな万法流転の世の中に、100年もの時を隔てて彼の時代の「牧場の標本」が今もちゃんと建っていて、しかも現役で使用されつづけているというのは、これこそまさに「新鮮な奇蹟」ですね。

 詩碑は、今は「展示資料館」となっている昔の酪農部上丸詰所の裏手にあります。これも1897年築の建物で、賢治はここに来るたびに目にしていたでしょう。
 2001年11月に、宮沢賢治学会地方セミナーの一環として、この小岩井で「牧場の風と光と星のまつり」が行われましたが、この時に詩碑の除幕式がありました。当日の参会者250人は、小岩井の牛乳で乾杯して、碑の誕生を祝ったということです。


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