別役実「賢治幻想 電信柱の歌」

賢治幻想 電信柱の歌 忙しくて、ブログの更新もできませんでした。

 今日はやっと、4月18日にNHK衛星第2で放映された、劇団「弘前劇場」による「賢治幻想 電信柱の歌」 の録画を見ることができました(右写真)。
 これは、青森県の「弘前劇場」が、別役実さんに委嘱した新作の戯曲です。そのあらすじをひとことで言えば……、 とここで書いてしまうとネタバレになるので控えておきますが、中心的な登場人物は、カネタ・イチロー、レオン・キュースト、 そして山猫博士デステゥパーゴ、の三人です。

 賢治の「どんぐりと山猫」では、かねた一郎が「山猫」の裁判に招かれ、「ポラーノの広場」では、 レオーノキューストが招かれもせずに「山猫博士」のパーティに現れ……、という構造がありますが、この二つの 「山猫」が、もしも同一の存在に重ね合わされてしまったら……というのが、この戯曲の出発点です。
 招かれた客と、招かれざる客のアイデンティティの混乱が、それぞれの「革トランク」を取り違えたために、さらに増幅されていきます。 別役さんの「不条理劇」らしいところなのでしょうが、登場人物の全員が、劇の進行とともに、自分がいったい誰なのかを問われていきます。

 別役実さんによる賢治関連の戯曲といえば、「ジョバンニの父への旅」(1987)を思い起こさずにはいられません。 今回もその最後のシーンでは、やっぱり賢治の言葉の魔力によって、じーんときてしまいました。

 もしもご覧になっていない方は、再放送にご注意下さい。