なめとこ山探訪

 昨夜は、新幹線で11時すぎに新花巻に着くと、駅前からタクシーに乗りそのままホテルに入って寝ました。
 今日の花巻は朝からあいにく雲が低く垂れ込め、雨が降り出していないのが幸運なほどの空の色です。ホテルで朝食をすませて、 集合場所の花巻駅西口に着いたのは、8時25分頃でした。もうたくさんの人が集まって、バスに乗り込んでいます。

 ほぼ定刻どおり発車したバスは、「賢治学会・花巻市民の会」の方々の解説とともに、「雲の信号」詩碑「渇水と座禅」詩碑「ひとはすでに二千年から」 詩碑の前を順に通り、昔の電車道に沿って、志度平温泉、鉛温泉と豊沢川をさかのぼっていきました。
 目の前に豊沢ダムとその湖が姿を現すと、バスは湖の北側を大きく廻って、幕舘橋に着きました。この橋は、 なめとこ山を遠望するための絶好のスポットの一つで、下写真のような透明ボードに書かれた説明図も設置されています。

 しかし、この場所からの実際の眺めは、下写真のごとくでした。上の図と較べてみて下さい。はたして「なめとこ山」の姿は、 霧の奥に見えているのでしょうか。

 そこで、上のナマ写真をもとに、Photoshopでトーンカーブをいじって、曇り空の部分のコントラストを強調してみたのが、 下の画像です。谷の向こうに、丸い山の影がどうにか現れました。

 肉眼ではっきりと山の形を見られなかったのは残念ですが、まあ賢治自身もお話の中で、 「ほんたうはなめとこ山も熊の胆も私は自分で見たのではない」と書いているのですから、 初めての私にはこういう幻のような姿でよかったのかもしれません。

 しかし、彼が本当に見たにせよ見なかったにせよ、次の文章はなんとこの実際の情景にぴったりすることでしょう。

「…なめとこ山は一年のうち大ていの日はつめたい霧か雲かを吸ったり吐いたりしてゐる。 まはりもみんな青黒いなまこや海坊主のやうな山だ。…」