「友だちと 鬼越やまに」詩碑
1.テキスト
〔友だちと 鬼越やまに〕
友だちと
鬼越やまに
赤銹びし仏頂石のかけらを
拾ひてあれば
雲垂れし火山の紺の裾野より
沃度の匂しるく流るゝ
宮沢賢治
2.出典
旧校本全集「〔友だちと 鬼越やまに」(「補遺詩篇 I」)
3.建立/除幕日
1992年(平成4年)11月 建立
4.所在地
岩手県滝沢市大釜風林 小岩井駅通り南側
5.碑について
JR田沢湖線を小岩井駅で降りて、駅前を東西に走る通りを右手に、つまり東の方に400mほど行った南側の、とある民家の生け垣の間に、この詩碑が建っています。建立者の栗谷川寛衛氏は、賢治の作品に出てくる鉱物やその採集地を、丹念にたどって調査をしておられるそうです。そのような賢治との関わりが、特に「鉱物採集」を題材としたこの作品を選んで、詩碑として建てられる契機となったのだろうと思われます。
『新宮澤賢治語彙辞典』によれば、「仏頂石」とは、「玉髄(特に白色ブドウ状のもの)」のことで、玉髄というのは、「石英の非常に細かい結晶が網目状に集まり、緻密に固まった鉱物の一種」(Wikipediaより)ということです。
また「鬼越山」は、一般には「鬼古里山(おにごりやま)」と表記され、岩手山の南の山裾にある、森のような小さな山の一つです。
ところで、詩碑に刻まれているこの「〔友だちと 鬼越やまに〕」という文語詩は、『旧校本全集』第六巻の「補遺詩篇 I」に収録されていたのですが、『新校本全集』になると、忽然と姿を消した、いわば「幻の作品」なのです。その事情については、ブログの方に書きましたので、ご参照下さい(「友だちと 鬼越やまに」詩碑と幻の作品)。
この碑は美しい花崗岩でできていますが、姫神産の大きな花崗岩を二つに切って、一方は一戸町観光天文台にある「月夜のでんしんばしら」碑となり、もう一方の片われが、この詩碑となったのだそうです。比べて見ると、碑面の形が対照形になっているのがおわかりいただけるかと思います。
小岩井駅前通り