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「和賀川」詩碑

1.テキスト

和賀川のあさぎの波と
天末のしろびかり
緑青の東の丘をわれは見たり

   「冬のスケッチ」より
         宮沢賢治

2.出典

「〔冬のスケッチ〕」第九葉より

3.建立/除幕日

1996年(平成8年)11月5日 建立/12月1日 除幕

4.所在地

岩手県北上市下江釣子 和賀川河川敷 「和賀川グリーンパーク」

5.碑について

 「〔冬のスケッチ〕」というのは、賢治の遺稿のなかで、短歌から口語詩へ移行する過渡期に相当すると推測されている、一群の草稿の総称です。文語と口語が入り混じった、アフォリズムのような断章でできています。
 書かれた時期については諸説があるようですが、賢治が農学校教師になる前か、教師時代に重なっているとしてもそのごく初期までだろうと言われています。
 ちょうど名前のとおり、『春と修羅』の「春」が来る前の、「冬」を象徴的に感じさせるような雰囲気があり、全体に孤独感がただよっている断章群です。

 ここで詩碑にとられているのは、そのうちの「第九葉」のなかの断片です。前後には夏油川や和賀仙人峠の鉱山の描写も出てきて、賢治が地質調査のために岩手県内を歩きまわっていた時期のことを思わせます。
 この部分は、のちに草稿の他の部分とともに改作され、文語詩「〔二川こゝにて会したり〕」になりました。その詩碑は、やはり北上市内ではありますが、和賀川の支流の夏油川をさかのぼったダムの展望台にあります。

 北上市内を流れる和賀川は、現在その河川敷が整備されて、「和賀川グリーンパーク」という美しい公園になっています。私が訪ねた夏の日の午後も、いろんな人が思い思いにくつろいでいました。
 関係ないですが、「和賀川」というのは上から読んでも下から読んでも「ワガガワ」で、おもしろい名前ですね。


和賀川河川敷(2001.8.16)