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「山の晨明に関する童話風の構想」詩碑

1.テキスト

おお青く展がるイーハトーボのこどもたち
グリムやアンデルセンを読んでしまったら
じぶんでがまのはむばきを編み
經木の白い帽子を買って
この底なしの蒼い空氣の渕に立つ
巨きなお菓子の塔を攀ぢよう

             宮 澤 賢 治

2.出典

三七五 山の晨明に関する童話風の構想(下書稿(二)手入れ)」(『春と修羅 第二集』)より

3.建立/除幕日

1972年(昭和47年)10月16日 除幕

4.所在地

花巻市大迫町内川目 早池峰河原坊

5.碑について

 北上山地の最高峰である早池峰山には、賢治は生涯何度も登ったようですが、この作品は1925年8月に一人で登った時のものです。この時の様子については、「河原坊-早池峯 詩群」でも触れました。

 目の前の早池峰山は、「この底なしの蒼い空氣の渕に立つ巨きなお菓子の塔」としてそそり立ち、全篇に夏の青空のような解放感があふれています。賢治は一人で山道を歩きながら、「イーハトーボのこどもたち」に、心のなかで呼びかけます。
 学校は夏休み中ですが、子どもたちのことを考えていたようです。

 詩碑は、早池峰山の南の登山口である「河原坊」というところにあります。岳川という清流に沿ってかなり山奥に入ったところですが、毎年7月~8月の間だけ、花巻駅前からここまで一日二往復のバスが出て、登山客を運びます。 花巻から一時間半ほどでした。
 碑の文字は、「イーハトーボのこどもたち」からの公募で採用された、当時小学校四年生の女の子の書だということです。力づよく、真摯なけなげさに満ち ていました。
 『新宮澤賢治語彙辞典』で原子朗氏は、この碑を、「数ある賢治詩碑中の白眉」と呼んでおられます。


詩碑前から早池峰山頂方面を望む (2001.8.15)