2024年も残り少なくなってきましたが、今年は宮沢賢治が生涯で唯一出版した詩集『春と修羅』と童話集『注文の多い料理店』の刊行100周年にあたるということで、各所で記念のイベントが行われました。
花巻市の宮沢賢治記念館で8月10日から来年2月9日まで開催されている特別展「刊行100周年 二冊の初版本」もそうですし、盛岡市のもりおか啄木・賢治青春館で12月1日から7日まで行われた「注文の多い料理店」出版100周年ウィークの連続企画もそうでした。
一方、胡四王山の麓に抱かれた宮沢賢治イーハトーブ館では、7月13日から来年1月30日まで、企画展「1924年の春─『春と修羅』『注文の多い料理店』刊行 100 年─」が開催中ですが、このたびその展示内容を収録した「図録」が発売されました。下の画像は、その表紙と裏表紙です。
図録には、栗原敦さんや杉浦静さんなど、宮沢賢治研究の第一人者を中心とした「刊行100周年企画展編集委員会」が執筆した展示パネル全25枚とともに、陳列ケース内の展示やハンドアウト等の図版も、オールカラーで収められており、とても読み応えがあります。
杉浦静さんによる「「小岩井農場の生成」概念図」は、この長大な作品の成立経過をわかりやすく図示してくれていますし、新発見資料である花巻の児童雑誌『子供の力』は、賢治と同時代の受容実態を垣間見せてくれます。
1部1500円で、宮沢賢治イーハトーブ館の売店およびインターネット注文にて、販売されています。
また展示会場のディスプレイでは、私が作成させていただいた「『春と修羅』の生成変化」という動画が映されているのですが、図録にはYouTube上にアップされたその動画のQRコードも記されており、下記ページで見られます。
動画「『春と修羅』の生成変化」(YouTube)
この動画の「1.関連草稿一覧」と「3.出版後の手入れ」では、当サイトの「『春と修羅』関連草稿一覧」を下敷きにして解説を加え、「2.詩集の編成経過」では、入沢康夫さんが解明された『春と修羅』の編成過程の四段階について、アニメーションにしてあります。
なるべく大きな画面でご覧いただければ幸いです。
思えば、1924年という年は賢治にとって、4月の『春と修羅』と12月の『注文の覆い料理店』の出版に加え、実生活では農学校教師としての仕事も充実し、8月には「飢餓陣営」「植物医師」「ポランの広場」「種山ヶ原の夜」という四つの自作劇を、連夜で生徒たちと上演しました。終了後には盛り上がって、「東京に出てやろう!」と生徒たちに言っていたということです。
彼の創作活動においては、一つの画期を成す1年だったのです。
今回の企画展「1924年の春─『春と修羅』『注文の多い料理店』刊行100年─」の図録は、そのような賢治の高揚を、百年後の私たちに伝えてくれる一冊となっています。
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