宮沢賢治研究会での発表

 明後日6月5日午後3時半から、「宮沢賢治研究会」の例会で、発表をさせていただきます。
 当世流に Zoom によるウェブ開催で、「宮沢賢治研究会」の会員の方は、web「例会」申込み専用フォームから申し込めば、視聴できるということです。

 発表要旨は、下記です。

「〈みちづれ〉希求」の挫折と昇華
    ―詩集『春と修羅』を貫く主題―

 さすがに近年は、賢治とトシの関係を「禁断の近親性愛」などと本気で煽る人は見なくなったが、しかし保阪嘉内や堀籠文之進への感情については、「同性愛」と論ずる説がいまだに跡を絶たない。
 確かに、これらの人々に対する賢治の思いは、非常に切実なものであった。しかし、この感情に「性愛」的な要素が含まれていた証拠は、作品にも伝記的事項にも、何一つ認められないのである。探しても見つからないものを前提とする仮説は、あまり筋が良いとは言えないが、それでも性愛説を主張する人が絶えないのは、いったい何故なのだろう。人間にこれほど強い対人感情を引き起こすのは、どうせ肉欲くらいしかない、という決めつけなのか?
 それはさておき、今回の発表では、なるべく作品テキストや伝記的事実を論拠としつつ、賢治独特のこの感情について、あらためて検討してみたい。演者の考えでは、これは詩集『春と修羅』の中心を貫く重要なモチーフであり、賢治がこの集の創作と推敲の二年間をかけて、思想的な超克を強いられた課題でもあった。この格闘を通して彼は、「個別性から普遍性へ」、「主観性から客観性へ」とも言うべき、人間観および世界観の大きな転換を成し遂げたのである。

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 会員の方とは、当日 Zoom にてお会いできましたら幸いです。