桑島法子「朗読夜」in堺

 今日は、大阪府堺市の栂文化会館で行われた、桑島法子さんの公演「朗読夜 ~nocturne~ 銀河鉄道の夜」に行ってきました。

桑島法子「朗読夜 nocturne 銀河鉄道の夜」

 プログラムは、下記でした。

・「ローマンス」
・「春と修羅 序」
・「銀河鉄道の夜(前編)」
―休憩―
・「銀河鉄道の夜(後編)」
・「雨ニモマケズ」
・「永訣の朝」
・「原体剣舞連」

 私が桑島さんの「朗読夜」を聞くのは、2004年5月の静岡公演以来で、考えてみればまだたった2回目です。実は、2011年3月13日に予定されていた花巻公演の際には、チケットもホテルも取っていたのですが、その2日前にあったあの大変な出来事によって中止になり、その時からずっと待ちわびていた機会でした。関西で「朗読夜」をやるのは、2002年以来なんと15年ぶりだということです。

 「銀河鉄道の夜」は、少し抜粋版でしたが、登場人物のキャラがそれぞれ個性的に際立っていて、一人だけで立体的なドラマが進行していくようです。ジョバンニのお母さんの哀愁を帯びた暖かさ、「鳥捕り」の人なつっこさとどこか胡散臭い怪しさとか・・・。
 「朗読」という営みには、いろいろなアプローチやスタイルがあると思いますが、日本のトップレベルの「声優」の表現力の凄さ、というものを実感しました。

 「雨ニモマケズ」は、パンフレットにも「桑島版」と書かれていましたが、穏やかな岩手的イントネーションによって、悲壮感とは無縁の諦観がにじむ。
 「永訣の朝」は、( )で括られたトシの声は、苦しい息の音とともに消え入るように、そして賢治の語りを表す地の文もやはり岩手のイントネーションで読まれるので、これもまるでドラマの一場面を見ているかのようでした。
 「原体剣舞連」は、桑島さんのお父さんが宮澤清六さんのソノシートをもとに朗読されていたという「芸」の親子相伝で、まるで歌のような語りで「朗読夜」の定番ですが、前にお聞きした時よりもさらに力強く進化して感じられました。この作品だけはマイクを使わない「地声」で、dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah には、激しい足のステップも入ります。

 次の「朗読夜」公演は、1月7日に東京だそうで、プログラムは「セロ弾きのゴーシュ」などです。(「今後の公演」をご参照下さい。)
 やはり桑島法子さんの「朗読夜」は、賢治の作品の生きた魅力に、まさに直接に触れられる機会だと思います。

栂・美木多駅より
「朗読夜」の帰りに「栂・美木多」駅より。右の建物が会場の栂文化会館。