高田高校の賢治碑再建への支援

 陸前高田市の高田高校にあった「農民芸術概論綱要」碑の状況に関しては、「三陸の賢治詩碑の現況(5)」においてもご報告いたしました。

 碑石は大量の瓦礫に埋もれて行方がわからなくなり、その後三上満さんたちの尽力によって発見され掘り出されましたが、谷川徹三氏の揮毫によって「まづもろともにかゞやく宇宙の微塵となりて無方の空にちらばらう」と刻まれた銅板は、ついに見つかりませんでした。
 その後、旧校舎解体も迫った2012年9月21日、この日はくしくも賢治忌にあたっていましたが、3階図書室の最後の見まわりの際に、谷川氏が42年前に書いた色紙の原本が、奇跡的に発見されたのです。元の色紙さえあれば、失われた銅板を新たに鋳造し直して碑石にはめ込むことも、可能になってきます。

 これによって、碑の再建に向けて必要な材料はそろったわけですが、高田高校の校舎は新たな用地に一から建設しなければならず、限られた予算の中で果たして賢治碑などというものにも経費は配分されるのかということが、個人的には気になっていました。
 そうしたところ、昨日7月3日に群馬県の団体が、賢治碑再建のためにということで高田高校に浄財を寄付されたということです。その記事が掲載された本日の朝刊(「東海新報」)を、私のツイッターのフォロアーの方が、送って下さいました。(画像をクリックすると、別窓で拡大表示されます。)

2013年7月4日「東海新報」
「東海新報」2013年7月4日朝刊より

 72万5000円もの寄付をされたのは、群馬県渋川市の「伊香保温泉プロジェクト」という団体で、この温泉街も過去に十数回も大火に遭ったものの、その都度復興してきた経験を持つのだそうです。
 上記ページには、プロジェクトの趣旨について、次のように書かれています。

今回の大震災は、彼の地の出来事ではありますが、かつて復興を成し遂げた伊香保温泉の力を、住民皆さんで思い出す機会でもあるとともに、被災地に向け、その想いを送り届けるため、伊香保温泉全体で復興を祈願しなければいけないと思い立ちました。

 遠く離れた温泉街の活動が、高田高校の賢治碑に着目し、このような熱いエールを送られたことは、私にとっても我が事のように嬉しいかぎりです。
 実は、昨年の「第3回イーハトーブ・プロジェクトin京都」の義援金は、この高田高校への思いも込めて、昨年10月に私ども実行委員会のメンバーが岩手へ行った折りに、陸前高田市教育委員会と、大槌町教育委員会に、それぞれお持ちしたのでした。

 上の記事を読むと、津波をかぶった谷川徹三氏の色紙は、「盛岡大学による被災資料の救済作業を経て、文字を確認できる状態で戻ってきた」ということです。
 さまざまな方の行動によって、被災地がますます復興していくことを、そしてそのために宮澤賢治の言葉や精神が、人々の力を集める拠り所となることを、祈り続けたいと思います。