「賢治おたく被害者の会」という会がありまして(というのは嘘で、本当はありませんが)、会員はおもに私の妻やその友人の方などで構成されています。
私自身は、何も人に「害」を与えるつもりはまったくないのですが、それでも現実に会員の方に現れている「症状」としては、私が賢治のことを並外れて好きだと知っていただいているばっかりに、新聞の記事の片隅や、本屋の棚の端っこに「賢治」という単語をふと見つけると、「ドキッ」としてしまって、このことを知らせてあげなければと思ってしまうのだそうです。被害者の方々には、心からお詫び申し上げます。
私としては感謝と恐縮をしていたところ、下記はその「会員」のお一人から教えていただき、妻が今日買ってきてくれた本です。標題の下に、小さいですが「私の大好きな宮沢賢治/ロジャー・パルバース」という文字が見えます。
ラジオ深夜便 2009年 09月号 [雑誌] NHKサ-ビスセンター 2009-08-18 Amazonで詳しく見る |
皆さんは、NHKラジオ第一放送で、だいたい深夜11:20から翌朝5:00まで放送されている「ラジオ深夜便」という番組をご存じでしょうか。私は、以前は仕事が遅くなって終電がなくなり、タクシーで帰宅する時に車内でよく耳にしたものでしたが、静かな独特の雰囲気が心地よかったものです。この頃は、ずっと聴いたこともなく記憶の彼方に去っていたところ、本年の5月17日・18日の放送の4時台の「こころの時代」というコーナーに、「私の大好きな宮沢賢治」と題して、昨年度「宮沢賢治賞」受賞者のロジャー・パルヴァースさんが出演しておられたんですね。
私は放送当時はまったく知りませんでしたが、パルヴァースさんの公式サイトの「掲示板」に、聴取者からのメッセージが投稿されていたので、後から知って、聴けなかったことを悔やんでいました。
そうしたところ、最近刊行された上記の『ラジオ深夜便 2009年 09月号』に、パルヴァースさんが鈴木健次アナウンサーを聞き手として話された内容が、掲載されたのです。
パルヴァースさんと日本との出会い、そして賢治との出会いとなぜ彼に傾倒していったのかという経緯、高度経済成長後の日本になぜ「賢治ブーム」が起こったのかという分析、それから賢治の作品の今後の地球全体にとっての意義など、奥深い話がパルヴァースさん独特のユーモアを持って語られています。1968年、日本へ来たばかりの若いパルヴァース青年が、京都・円通寺の縁側で有名な庭園を前に正座をしている写真が載っているのも、私にとってはお宝でした。
パルヴァースさんのお話は、雑誌の中の一つの記事ではありますが、値段は350円と安いのが嬉しいです。
それから Web の方では、「ラジオ深夜便」の公式サイトで、この時のパルヴァースさんのお話の録音の一部と、パルヴァースさん自身による「雨ニモマケズ」の英訳(Strong in the Rain)の朗読を聴くこともできます。これは、ぜひ一度お聴き下さることを皆さまにお奨めします。
以下、「ラジオ深夜便」におけるパルバースさんのお話の最後の部分の引用。
――「雨ニモマケズ」は賢治の願望だったのでしょうか。
パルバース まさにそうです。もっと丈夫な体を持ちたい、そうすればもっと人のために尽くすことができるのに、ということですね。「雨ニモマケズ」の英訳はいくつかあるのですが、そのどれもが、「マケズ」をそのまま否定形で訳していて、「ちょっと違うな」と思っていました。だからぼくの訳は、“Strong in the rain”で始まっています。「強い」という意味の“strong”で、「よし、やるぞ」という感じを出したかったんです。それは賢治の願望であり、祈りでもあったから。
――最後に、パルバース訳の「雨ニモマケズ」を紹介していただけますか。
パルバース 喜んで。声に出して読んで、音のリズムを感じていただければうれしいです。(2009年5月17日・18日放送)
Strong in the Rain: Selected Poems Kenji Miyazawa Translated by Roger Pulvers Bloodaxe Books Ltd 2008-04-15 Amazonで詳しく見る |
耕生
耕生です。
NHKラジオ深夜便の「こころの時代」、実は最近毎日聴いています。きっかけは、パルヴァースさんの「宮沢賢治を語る」が放送されることを知人が教えてくれたことでした(私にも「賢治おたく被害者の会」があるのです!)。パルヴァースさんのユーモア溢れる、そして本質をついた語り口に魅了されました。
もっとも、「心の時代」は早朝4時過ぎという時間帯なので、そうそう早起きするわけにも行かず、録音機能付きのラジオが欲しいなと思っていたのですが、タイマーを使うと普通のラジカセでも簡単・確実に録音できることがわかり、最近はもっぱら録音テープを、お昼休みに弁当を食べながら聴いています。90分テープ(45分×2)がちょうどぴったりです。
最近面白いなと思ったのは「新しい寺を求めて」(長野県神宮寺住職高橋卓志氏)、「おむすびが命を伝える」(森のイスキア主宰佐藤初音氏)、「合併しない矢作町宣言」(矢作町前町長根本良一氏)、「都市と限界集落を股にかけ」(作家森まゆみ氏)、「民話の魅力を子供たちに」(語り部渡部豊子氏)など。これらは永久保存版です。他にもたくさんあります。
時々、電波の状態が良くなくて混信することがあります(東京方面の電波が入ってくる)が、ラジオ深夜便の後半はFMでも放送されているので、早朝の「心の時代」は混信の少ないFMがお薦めです。
月刊誌「ラジオ深夜便」も発売されていますので、毎日のプログラムを番組表でチェックすることもできますから便利です。
ラジオの深夜放送というと、若者向けのディスクジョッキーというイメージがありますが、この「ラジオ深夜便」は「静かな独特の雰囲気が心地よい」シニア向けの番組です。中高年の方の間で静かなブームになっているようです。私もいつの間にか、その中高年の仲間になってしまったのかもしれません(笑)。
ちなみに、この番組のことを私に教えてくれた知人というのは、妻の友人の修道院シスターで、彼女は毎朝早起きして、この「心の時代」をラジオで聴いているようです。最近は修道院(修道尼院)も若い人が入ってこず、高齢化が進んでいるようです。
signaless
「賢治おたく被害者の会」とは言っても、「ドキッ」としてしまって、このことを知らせてあげなければと思ってしまうのであれば、それは素敵なことです!感謝と思いやり・・・ということでしょうか・・・。
って、あらら、実はこれは惚気られたというわけですね。
ウチには、賢治に夢中で家事や仕事がおろそかになり、自分をないがしろにされるという、ほんとうの被害者がいます。
「ラジオ深夜便」探してみます!
游氣
これはこれは貴重な情報ありがとうございます。
私の周囲には被害者がいませんのでこうした情報は届きません。
パルバースさんの『銀河鉄道の夜』(ちくま文庫)は所有しています。
hamagaki
耕生さま、signaless さま、游氣さま、コメントをありがとうございました。
全国各地の「被害」の実態が明らかになるとともに、一方では被害を与えておられない方の存在も確認ができましたので、私としても、これからは精進をして参る所存です。
游氣さま、本日のイベントで、弟さんにお会いしてご挨拶をさせていただきました。とても楽しい歌と素晴らしいギターを堪能させていただきました。
游氣
イベントにご参加、ありがとうございます。
その上、写真まで掲載していただいて。
フォークソングの亡霊のような弟です。
hamagaki
游氣さま、どういたしまして。邦生さまの演奏と歌を、本当に楽しませていただきました。何十年ぶりでしょうか、私が中学生の頃に好きだった「五つの赤い風船」なども聴けて、感激でした。
あたかも「フォークソングの精霊」のようでした。(^^)