千原英喜作曲「混声合唱とピアノのための組曲」の終曲、「雨ニモマケズ」を、「歌曲の部屋~後世作曲家篇」にアップしました。また podcast でも公開しました。
これは2007年9月に初演されたばかりの新しい曲ですが、普通の意味で「感動的」な曲で、作曲者自身が、「賢治の世界と対話しながらの創作の日々、書き留められて行くメロディーやハーモニーのひとつひとつに喜びを感じながら、至福の時を過ごした」ということです。
そして、この終曲「雨ニモマケズ」については、楽譜に掲載されている「曲について」という文章の中で、千原氏は次のようにコメントしておられます。
さぞかし無念だったろう。晩年の病床の中で諦念をもってしたためられた詩・祈りである。賢治は “サウイフモノニ、ワタシハナリタイ”のである。詩の冒頭 “雨ニモマケズ、風ニモマケズ” にヴァイタリティを感じてはならないと人は言うかもしれない。しかし私には雨風の中へ勇猛果敢に飛び出し行く賢治の姿が見えるのだ。東に西に人々を励まし歩く声が聞こえて来るのだ。彼の一生を顧みて、つねに企画し、挫折し、また新たに物事をおこす前向きなエネルギーに心打たれる。私は賢治の魂にエールを送ろう。哀憐の調べではなく、勇気奮い立つ響きで彼を讃えよう。そして賢治とともに私は颯爽と山野をかけめぐるのだ。Alla Marcia―行進曲風に、活き活きと、アッコード(和弦)に力漲らせて。曲は今を生きる皆への応援歌、命の讃歌だ。
まさに「今を生きる皆への応援歌、命の讃歌」としての「雨ニモマケズ」という曲が、新たに誕生したわけですね。初演を歌った「大阪コレギウム・ムジクム」の「合唱団日誌」には、「衝撃の「雨ニモマケズ」」という記事も載っています。
MP3 は、下記から聴くことができます。混声合唱のソプラノは初音ミク、アルトは Meiko、テノールとバスは Kaito ですが、やっぱりどうしても機械っぽいのはご容赦を・・・。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
混声合唱組曲 千原英喜 雨ニモマケズ 詩 宮沢賢治 作曲 千原英喜 全音楽譜出版社 2008-06-13 Amazonで詳しく見る |
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