もう一組の「双子の碑」

 昨日は、「早春」詩碑と「金田一國士頌」碑という二つの石碑が、一卵性双生児のようにして生まれたということを書きましたが、実は賢治関連の碑には、もう一組、同じようなカップルがあります。
 下の写真で、左側は一戸町奥中山高原の観光天文台前にある「月夜のでんしんばしら」碑で、右側は、滝沢町小岩井駅通りの栗谷川寛衛氏邸にある「友だちと鬼越やまに」詩碑です。

「月夜のでんしんばしら」碑と「友だちと鬼越やまに」詩碑

 やはりこれらも、一つの岩を二つに切ったそれぞれの片割れを磨いて、碑石としているのです。
 碑材になっている石は姫神産の花崗岩で、二つの部分はもとの石の中心点を通って均等に分割されているのではなくて、「月夜のでんしんばしら」の方が厚く、「友だちと鬼越やまに」の方がやや薄い形になっています。しかし、切断面である碑の表面は、この写真に見るようにやはり左右対称になっています。
 それぞれまた対称となる位置に、それぞれ賢治が描いた電信柱の絵と、みみずくの絵が、ワンポイントとしてあしらわれているのがかわいいですね。

 栗谷川寛衛氏は、一戸町観光天文台にプラネタリウムを設置した方の一人だそうで、そのような縁で、碑の片割れの所有者となられたのでしょう(参考:『新訂/全国編 宮沢賢治の碑』(吉田精美編著))。
 氏は、賢治の作品に出てくる鉱物やその採集地を詳細に調査されており、そのような関心から、賢治が「仏頂石=玉髄」を採集するために、盛岡中学の同級生と鬼越山に出かけた時の作品を、自宅に碑として建てられたのかと思います。

 「天と地」と言うと大げさですが、天文学と鉱物学、賢治が好きだった二つの分野を象徴するような、詩碑の取り合わせです。