「歌曲の部屋~後世作曲家篇~」の林光氏のページに、同氏作曲による「高原」(混声合唱版)の演奏ファイルをアップしました。
歌詞は、『春と修羅』に収められているあの有名な方言詩「高原」で、林光氏はまず1977年に「プレイ3」と題した作品の一章としてこの詩に旋律を付け、後にこれを「改作」して、混声四部合唱の編成にしました。それが、今回の曲です。
作曲者自らこの版のことを、ルネサンス時代に流行した合唱曲形式である「マドリガル様式」と呼んでいるように、賢治の牧歌的な詩が、無伴奏で多声的に歌い絡められます。
ソプラノとアルトは Meiko、テナーとバスは Kaito の声で、パートごとに声質も少し変えて作成し、SONAR でコーラス効果やリバーブ効果を付けました。
下記からは、直接 MP3 版を聴けるようにしておきます。
海だべがど、おら、おもたれば
やつぱり光る山だたぢやい
ホウ
髪毛(かみけ) 風吹けば
鹿(しし)踊りだぢやい
つめくさ
いつもすばらしい曲をありがとうございます。
友人が花巻の言葉で初めて聞かせてくれた賢治詩が「高原」でした。せいせいするような、少しだけ滑稽感のある響きでした。
草稿が「叫び」ですから、疾風に向かって詠じる仕方もあることでしょう。
一鷲明怜さんのような怒涛にも聞こえ、この林光さんのように澄明にも聞こえ、「高原」は「初夏と修羅」といったような感じです。
hamagaki
つめくさ様、お聴きいただいてありがとうございました。
私の技術の未熟さもあり、また機械演奏の限界もあり、林光さんの音楽のすばらしさの何分の1も表現できていませんが、一般になかなか実演を耳にできる機会もないものですから、「こんな曲もあります」ということでお出ししました。
こういった音楽の競演を生で楽しめるような、「賢治音楽祭」というようなものもあればよいのに、と思ったりします。
今後とも、よろしくお願いします。
toyoda
すばらしい合唱曲ですね。
言葉とメロディ、ハーモニーが
一つの世界を創りだしています。この世界に
私の入り込みたいと思いました。
思わず、何回もきいてしましました。
昔、高田三郎氏のアカペラの混声合唱組曲「心象スケッチ」(「水汲み」「森」「(さっきは陽が)」「(風がおもてで呼んでゐる)」)に感動していたことを思い出しました。
この作品もこの詩に書いてある風景を追体験している
気にするような音楽の力を感じました。
「水汲み」の「向ふ岸には 蒼い衣のヨハネが下りて」のところは、高田氏の音楽の力でより説得力を感じ、何回も夢中になって歌った事を思いだします。
「高原」も一度歌ってみたいですね。
hamagaki
toyoda 様、こんばんは。
コメントを拝見して、以前に林風舎で購入した、高田三郎の「心象スケッチ」の入ったCDを出してきて、聴いてみました。ご指摘の、「向こう岸には、蒼い衣のヨハネがおりて…」の箇所は、やはり胸にじーんときますね。お教えいただいて、ありがとうございます。
このCDの解説書には、高田三郎氏自身による自作への注釈が掲載されていて、すでに toyoda 様はご存じの内容かもしれませんが、私にとってとても興味深かったので、以下に引用させていただきます。
すなわち、高田三郎氏はこの「ヨハネ」を、農作業の手伝いをしている「少年」のことと考えて、作曲をされたわけですね。曲のこの部分に特にあふれている「やさしい愛情」のようなものが、理解できるような気がします。
そして考えてみれば、「ヨハネ」のイタリア語名が、「ジョヴァンニ」ですね・・・。私自身はこれまでここの「ヨハネ」というのは「神々しいような様子に見えた農夫」くらいに思っていましたので、「少年」とする解釈が、新鮮でした。自らもクリスチャンであり、「ヨハネによる福音」という作品もある高田三郎氏ならでは、という感じがしました。