以前にここでもご紹介した、栗原敦さんによる「NHKカルチャーアワー文学探訪『宮沢賢治』」が、この4月1日の放送(と今日の再放送)で終了しました。
なかなか毎回は聴けないことも多かったのですが、そのテキストはこの半年間、ずっと座右に置かせていただきました。
そして実際にラジオの放送を聴けた時には、やさしい語り口で、賢治の世界の全貌を真摯に伝えようとしてくださる栗原さんの姿勢が、いつも心に残りました。半年間の素晴らしい講義を、ありがとうございました。
最後の第26回は、「「屈折率」と晩年の詩―むすびにかえて―」と題して、『春と修羅』冒頭に置かれた「屈折率」と、「文語詩稿 五十篇」の冒頭に置かれた「〔いたつきてゆめみなやみし〕」の2作品をとりあげて評釈し、さらに賢治の仏教的世界観についても解説を施そうという、盛り沢山なものでした。
詩人としての賢治の出発点を記念する「屈折率」(1922)、死の直前の夏(1933)に定稿に書きつけた「〔いたつきてゆめみなやみし〕」、どちらも短い作品ではありますが、限りない奥深さと清冽なリリシズムをたたえています。
1922年から1933年までの11年間、これはあらためて引き算をしてみるとたった11年間、という気がするのですが、この期間に、宮澤賢治の莫大な詩業のすべてが行われたのですね。
コメント