修羅のなみだはつちにふる

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 昨夜は職場の同僚の人たちと奈良・東大寺の「お水取り」を見て、今日はあいにくの雨でしたが、五重塔も濡れてかすむ中、興福寺の「阿修羅像」を見てきました。

 日本に数ある仏像の中でも、この像はとくに人気の高いものでしょうね。それにしてもなんという切実な表情をしていることかと思います。真正面から向かい合うと、眉間にはひときわ力が入り、はたして何かを強く訴えているのか、あるいは求めているのか、いずれにしても迫ってくる情動がひしひしと感じられます。
 もとは仏教にとって「異教の神」であったことから、善と悪の両義性をかかえさせられ、六道の世界では「人」よりも下に置かれ、「怒り」や「攻撃性」の化身として皆から責められてきた‘asura’でした。

 像の身長はだいたい1.5mくらい、まるで少年のような顔立ちと肢体が特徴的ですが、奈良・天平時代というはるか古に、作者はいったいどんな思いをこめてこのような姿を造形したのかと思います。
 これが作られたとされる734年は、『万葉集』の時代絵巻では後期にさしかかったあたり、山部赤人や大伴旅人が活躍し、大伴家持はまだ十代だったはずですね。

阿修羅像