桑島法子『イーハトーブ朗読紀行』

桑島法子のイーハトーヴ朗読紀行 「桑島法子のイーハトーヴ朗読紀行」というDVDを買いました。昨年に出た 「銀河鉄道の夜 TYPING」というキーボード練習用ソフト以来、岩手出身というこの若い声優さんのことが気になっていて、 広告を目にすると思わず注文したのです。

 内容は、「岩手山」「鎔岩流」など『春と修羅』第一集と二集から六つの詩と、「銀河鉄道の夜」の抜粋の朗読です。 その出来ばえにはいろいろな意見があるかもしれませんが、少なくともこれは一聴して、 読み手の中途半端ではない意気込みを感じさせるものでした。
 なかでも、詩碑の前で読む「原体剣舞連」は、 テキストに独特の節回しを付けて朗誦しながら、最後は「剣舞の歌」になだれ込むというもので、 この華奢な少女のどこにこんな力があったのかというエネルギーを感じました。清六さんの朗読のようでもあります。また、「銀河鉄道の夜」 における声の使い分けの絶妙さは、声優としての彼女の真の技量を感じさせ、 まるですぐれた演奏家の演奏を聴いているような気持ちにもなりました。

 ただ他の作品では、校訂記号の(ママ)というのをふりがなと取って読んでいたり、「また はひまつ(這い松)の…」というところを 「または、ひまつの」と読んだり、(他にもいくつかありますが)読み方に少し気になるところがあるのが残念で、 誰か専門家を監修に付ければよかったのにと思います。
 しかし、私にとってはこれからも目が離せない人です。「朗読夜」などというイベントもしているようなので、 ライブも楽しみです。「宮沢賢治学会」のセミナーなんかにも招聘したらいいのにと思います。

 アニメや声優をめぐるサブカルチャーの世界ではすでにカリスマ的な人気を得ているというこの人が、 一方でこのような世界もしっかりと持っているというのは、何か嬉しく感じました。