「風の又三郎」像

1.テキスト

なし

2.出典

童話「風の又三郎」より

3.建立/除幕日

2007年(平成19年)4月 設置

4.所在地

京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地 京セラ本社ビル前

5.碑について

 種山ヶ原にある、中村晋也氏の彫刻「風の又三郎」像が、京都市の南部にある京セラ本社前にも、展示されています。

 以前から京セラ株式会社は、本社ビル内に「京セラギャラリー」を開設して、様々な美術作品を無料で展示していましたが、しばらく前からその一環として、この本社ビル前庭において、中村晋也氏の彫刻作品4体を、道行く誰でも鑑賞可能な状態で設置してくれていたのです。
 周辺のベンチは何となく居心地がよさそうで、休日のお昼にもなると若者たちが、近くのコンビニなどで買ったパンを、ベンチに座って頬ばっている風景も目にします。

 ただこの場所は、上写真の背景に見えているような高架の自動車道(第二京阪道路)と、反対側には下写真のような地上20階建て(95m)の京セラビルに挟まれた、高層都市建造物の「谷間」のような一角で、大自然の中に立つ種山ヶ原の像とは、環境の違いが歴然としています。(「風の又三郎」の書き出しが、「谷川の岸に小さな学校がありました」というのとは、同じ「谷」でも雲泥の差です。)
 私が知るかぎりでは、あの種山ヶ原の像が今もきれいなあかがね色でつやもあったのに比べると、こちらは表面に少し緑青も浮いているようで、やはり排気ガス中の硫黄酸化物や窒素酸化物等の影響があるのかもしれません。

京セラ本社ビル

  しかしそれでも、こちらの又三郎君もやっぱり表情は健気で凜々しく、都会の中でもここだけには、清々しい風が吹き渡っているような感じがします。思えば彼は、いつも地球上のどこへでも自由自在に飛び回っていますから、時にはこういうごみごみしたところにもやって来て、自然を忘れている都会人の憂さを、吹き飛ばそうとしてくれるのかもしれません。

 種山ヶ原にある像は、又三郎が花巻の方角を眺めているように設置されているのですが、こちらの又三郎も、北の方角を向いて、つまりやっぱり花巻の方角をじっと見据えているようです。