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「イギリス海岸の歌」碑

1.テキスト

なみはあをざめ 支流はそそぎ
たしかにここは 修羅のなぎさ

2.出典

歌曲「イギリス海岸の歌

3.建立/除幕日

1996年(平成8年)3月 建立
2010年(平成22年) 補修(写真部分交換)

4.所在地

花巻市下小船渡 北上川西岸(イギリス海岸)

5.碑について


オオバタグルミの化石

 「夏休みの十五日の農場実習の間に、私どもがイギリス海岸とあだ名をつけて、二日か三日ごと、仕事が一きりつくたびに、よく遊びに行った処がありました。
 それは本たうは海岸ではなくて、いかにも海岸の風をした川の岸です。北上川の西岸でした。東の仙人峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横截ってくる冷たい猿ヶ石川の、北上川への落合から、少し下流の西岸でした。…」

 上のような書き出しではじまる短篇「イギリス海岸」には、この場所が、農学校教師であった賢治にとっても、その生徒たちにとっても、いかに楽しい遊び場であったかということが描かれています。

 また、ここはたんなる遊び場にとどまらず、上記の短篇のなかにも書かれているとおり、賢治が日本ではじめて「オオバタグルミ」の化石を発見した、記念すべき場所でもありました。

 このように、すばらしい思い出がたくさんつまった水辺ですが、賢治はこの岸を、「修羅のなぎさ」とも呼びます。
 ここは賢治にとって、後年「〔川しろじろとまじはりて〕」(『文語詩稿 五十篇』)に詠みこまれたような、孤独や悲しみを帯びた場所でもあったようです。

 現在の「イギリス海岸」は、浸食や水量の増加によって、かの「あをじろい」泥岩層は少ししか見えなくなってしまっています。


「イギリス海岸」より下流を望む 手前下はわずかに露出した泥岩層