仙台の佐々木孝夫さんから、新作のCD『宮沢賢治ソングブック Musical Sketch Modified ~ポランの広場~』をご恵贈いただきました。佐々木さん、どうもありがとうございました。
宮沢賢治ソングブック Musical Sketch Modified ~ポランの広場 ちぢれ羊≒井上英司(演奏 編曲), MIKA(Vocal), ほか Paradise Valley Private Record (2021/03) Amazonで詳しく見る |
これまで佐々木孝夫さんは、賢治が聴いていたと推定されるSPレコードを複刻したCDを、5集にわたって制作してこられましたが、今回のCDは、賢治の劇「ポランの広場」で使用されている様々な楽曲や、賢治が唄っていた歌曲を、宮城県在住のミュージシャンの方々が演奏したものです。
楽しい歌声や演奏によって、劇「ポランの広場」の会場の熱気や、農学校の生徒たちと生き生き過ごす賢治の様子が、甦ってくるようです。
CDの内容は、以下のようになっています。
- アシェンダ - ザ・ソサエティ・タンゴ(P.Biese)
- キャッツホヰスカー(E.Gladstone)
- 牧者の歌(Spilman 宮沢賢治)
- つめくさの花の咲く晩に(G.Evans 宮沢賢治)
- ポラーノの広場の歌(Gabriel 宮沢賢治)
- スイミングワルツ(不詳)
- メドレー:角礫行進歌(Gounod)~応援歌(宮沢賢治)
- 種山ヶ原(Dvořák)
- イギリス海岸の歌(宮沢賢治)
- 月夜のでんしんばしら~精神歌(宮沢賢治)
- 印度へ虎狩りに(Evans)
- 星めぐりの歌(宮沢賢治)
- 主よみもとに近づかん(L.Mason)
- 応援歌 -reprise-
- 月夜のでんしんばしら -reprise- AMBIENT
1曲目の「アシェンダ - ザ・ソサエティ・タンゴ」は、パウル・ビーゼが1913年に作曲した古いタンゴですが、賢治の劇「ポランの広場」の冒頭部分のト書きに、「人数の歓声、Hacienda, the society Tango のレコード、オーケストラ演奏、甲虫の翅音、/幕あく」として登場するものです。実際に農学校で劇を上演する際には、冒頭のBGMとして、賢治がこのタンゴのレコードをかけたのだろうと思われます。
夏の夕方のむせかえるような空気のなか、賑やかでちょっと頽廃的なパーティが、さあ今から始まる!という感じで、CDの幕開けにもふさわしいメロディーです。
これに続く各曲も、劇「ポランの広場」で替え歌になっていたり、賢治が農学校の生徒たちとともに歌ったりしていた曲を、自由闊達にアレンジしたものです。いずれもリラックスした本当に楽しい演奏で、そのくつろいだ響きからは、当時の賢治や生徒たちが音楽を心から楽しんでいた雰囲気が伝わってくる感じです。
ボーカルが入っているのは、上記のうち 3.4.5.7.10.12.の各曲で、その歌声も魅力的かつユーモラスです。
副題の「Musical Sketch Modified」というのが洒落ていますが、全曲の Modify=編曲を一手に行い、さらに演奏の中心を担っておられるのは、東北大学文学部哲学科を卒業し、他のお仕事のかたわら仙台で多彩な音楽活動を行っておられる、井上英司さんという方です。今回のCDは、企画構成を担当した佐々木孝夫さんと、井上さんとの共同制作になっています。
現在は Amazon でも購入可能になっていますので、賢治の音楽に関心のある方にはお勧めしたい、心温まるCDです。
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