ふと思い立って、賢治の詩の中に「鳥」が現れる回数が、時間的にどう推移したのかということを、調べてみました。
『春と修羅』「春と修羅 第二集」「春と修羅 第三集」という分類ごとに、1か月あたりの作品数と、そしてそのうち何らかの形で「鳥」が登場する作品数を、棒グラフにしたのが、下の図です。
ここで、「何らかの形で鳥が登場する」というのは、作品中で賢治が鳥の姿を見たとか、その声を聴いたという描写があるものとしています。「鳥のやうに栗鼠のやうに/おまへは林をしたつてゐた」などというのは、「鳥」という語は出てきていますが、賢治が鳥の姿や声を体験しているわけではないので、ここにはカウントしません。
グラフでは、水色の棒の高さが、月ごとの総作品数を表し、ピンク色の棒の高さが、そのうちで鳥が現れる作品数を表します。
『春と修羅』における月ごと作品数と鳥の現れる作品数
「春と修羅 第二集」における月ごと作品数と鳥の現れる作品数
「春と修羅 第三集」における月ごと作品数と鳥の現れる作品数
とまあ、上にご覧いただいたようなことにしかすぎませんが、当然のことながら、毎年春から夏にかけての時期に、「鳥の現れる作品」がよく書かれる傾向があります。
そもそも私がこういうことを調べようかと思った動機は、何となく「春と修羅 第二集」には、「鳥」が出てくる作品が多いような気がしたから、ということだったのですが、その予想はその通りでした。
上の図からわかるように、「春と修羅 第二集」の初期、すなわち1924年3月から7月の期間というのは、賢治が口語詩を主に作っていた7年間のうちでも、最も創作が旺盛だった時期のうちの一つに数えることができます。そしてちょうとこの頃に、彼は生涯のうちで最も多く鳥が出てくる作品を書いており、とりわけ「休息」「鳥の遷移」「〔この森を通りぬければ〕」など、トシのイメージを伴った鳥は、この季節に賢治の身近に現れたのです。
賢治鳥類学 赤田 秀子 中谷 俊雄 杉浦 嘉雄 新曜社 1998-05-01 Amazonで詳しく見る |
コメント