宮沢賢治研究会発表「宮沢賢治の他界観」

 来たる4月7日(土)に行われる宮沢賢治研究会例会において、「宮沢賢治の他界観」と題して発表させていただくことになりました。
 下記が、研究会に提出した発表要旨です。

宮沢賢治の他界観 ―その非仏教的側面と現代的意義―

 宮沢賢治は一貫して敬虔な仏教徒であり、その世界観は基本的に仏教の教理に則っていた。「死者の行方」という問題に関しても、母親を亡くした保阪嘉内に送った手紙では、日蓮の教えに従い母の後生のために如来寿量品を書くよう強く勧めており、そこには何の迷いも見えない。
 妹トシの死去に際しても、当初「永訣の朝」や「風林」には、彼女が天界に生まれるよう願う信仰と祈りが記されていたが、しかしその後の作品群は、次第にこのような仏教的輪廻転生観には収まらなくなっていく。「白い鳥」に引用されているヤマトタケル伝説をはじめ、日本固有の他界観に根ざしたイメージが、次々と展開されていくのである。
 こういった賢治の他界観の「非仏教的」側面は、これまであまり注目されてこなかったが、当日は特にそのような面に光を当てつつ、トシ追悼過程における彼の他界観の動揺・変遷を、作品に沿って辿ってみたい。
 ある意味では、ここで賢治が仏教のみに徹することができなかったからこそ、苦悩とともに彼は無意識の底から豊穣なイメージを紡ぎ出し、これが図らずも現代に生きる我々の深い共感を呼び、示唆を与えてくれているとも言える。


 発表のためのスライドを作らなければならず、作業を始めたところなのですが、とりあえず予定しているそのタイトル画面。禅林寺の「山越阿弥陀図」をお借りして…。

「宮沢賢治の他界観」タイトル画面

 ご関心をお持ちの方は、ご来聴いただければ幸いです。