しばらく前から打ち込んでいた鈴木憲夫作曲の混声合唱曲「雨ニモマケズ」が、やっとひとまず完成しました。ソプラノは「初音ミク」、アルトは「巡音ルカ」、テノールとバスは「Kaito」です。いろいろと難しかったです。
お聴きいただいたらわかるとおり、この曲においては、「雨ニモマケズ手帳」の「11.3」と題されたテキストの後に続けて記入されている、
南無無辺行菩薩
南無上行菩薩
南無多宝如来
南無妙法蓮華経
南無釈迦牟尼佛
南無浄行菩薩
南無安立行菩薩
という略式の十界曼荼羅が、かなり重要なモチーフとして組み込まれています。作曲者の鈴木憲夫氏は、これについて次のように書いておられます。
11月3日の日付けで手帳に書かれたこの「雨にも…」は<詩>というより、賢治の生き方そのものが綴られています。そして自筆の最後にはお経が書かれてあります。仏教の世界を通して自らの生活を自戒しつつ、激しくも、しかし大らかに生きた宮澤賢治。私はこの詩の最後にお経が入らなければ完結しないといつしか思うようになりました。そしてこの詩と永いこと私なりの付き合いをしていくうちに、賢治の生き方そのものこそを音楽で表現したいと思うようになりました。
曲の始まりと終わりに、この略式十界曼荼羅に出てくる如来や菩薩の名が唱えられ、両端でフレームのようなような役割を果たしています。
また、曲の冒頭が、「賢治…賢治…」という呼びかけで始まるのも独特ですし、賢治を象徴する音の一つとして、風の音も登場します。この風の音は、合唱団が歌う時にはテノールとバスの人が「phyu― phyu―」と無声音で模写するのですが、VOCALOID ではこのような声を出させることはできませんので、シンセサイザーの風の音を用いています。
また近いうちに時間がとれれば、もう少し解説も付けて、「歌曲の部屋~後世作曲家篇~」にアップしたり、Podcasting でも公開したいと思っています。
それでは、鈴木憲夫作曲混声合唱曲「雨ニモマケズ」をお聴き下さい。
「雨ニモマケズ」(宮澤賢治詩/鈴木憲夫曲)MP3(10.1 MB)
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ南無無辺行菩薩
南無上行菩薩
南無多宝如来
南無妙法蓮華経
南無釈迦牟尼佛
南無浄行菩薩
南無安立行菩薩
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