84年前の今頃に、賢治は三陸海岸を一人で旅していたのです。
今日はちょっと遊びで、「敗れし少年の歌へる」の第一節を英語に訳して、歌のファイルを作ってみました。歌声は、VOCALOID 第一世代の、'Miriam'です。
英訳の出来はお恥ずかしいもので、とても「詩」にはなっていませんが、それでも歌の旋律に英語をあてはめるのには、苦労しました。単語のアクセントの箇所とメロディーの強拍を一致させること、などです。
訳にあたっては、この文語詩の口語詩前駆形である「暁穹への嫉妬」の、Roger Pulvers さんによる英訳 'Jealous of the Dawn'("STRONG IN THE RAIN" Bloodaxe Books Ltd.,2007所収)を、一部参考にさせていただきました。
敗れし少年の歌へる
ひかりわななくあけぞらに
清麗サフィアのさまなして
きみにたぐへるかの惑星(ほし)の
いま融け行くぞかなしけれSong of a broken-hearted boy
In the blush of dawning sky, even morning light shivers
There's a planet which sparkles and gleams, just like pure
sapphire
It's wink reminds me of you truly, I miss you, my planet !
Now it's melting in the sky, leaving my loneliness「敗れし少年の歌へる(一部英語版)」(MP3: 856kB)
【語注】
- blush: 顔の赤み、(バラなどの)赤み。ここでは暁空の赤みの比喩。
- shiver: (寒さなどで)身体が震える。
- sparkle, gleam, wink: いずれも、光がきらめく、またたく、の意。
文語詩にはこれらの表現はないが、前の2つの語は、Roger Pulvers 訳「暁穹への嫉妬」において、'The pure fine sapphire-like planet / Sparkling, gleaming with noble light' とあることから、謹んでここに使わせていただいた。
そもそもこのテキストを訳す際には、「惑星」と「きみ」を、英語において如何に「たぐへる」か、ということが問題であったが、前駆口語詩「暁穹への嫉妬」においては、惑星が作者に「青い合図(wink)」を投げるという表現があることから、ここでは星の「またたき」が、「きみ」の wink を想起させる、としてみた。
三陸海岸の夜明け
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