ウェブと「地歴の本」

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 忙しくて夜中に帰宅する日が続き、なかなかちゃんと記事の更新ができず申しわけありません。
 ところで、「賢治の事務所」の「緑いろの通信 1月17日号」に加倉井さんがまとめられている「賢治愛好家のための交通博物館の見どころガイド」は、徹底的に素晴らしい手引き書ですね。

 私も以前、この博物館の場所にかつて「万世橋駅」があったということを知って、ニコライ堂やこのあたりに一度行ってみたいと思ったものでした。20歳の賢治は、保阪嘉内あての手紙に、「甲斐に行く万世橋の停車場をふっとあわれにおもひけるかな。」という短歌を書いていますが、ふと駅の建物を見て、「ここから汽車に乗れば、あなたに会えるなあ・・・」と思うというのは、皆さんは経験はおありでしょうか、ほんとうにまるで恋人に寄せる気持ちのようですね。

 じつは、今日は東京へ出張の用があって早朝から新幹線で出かけていました。しかし用事が済むとすでに博物館の閉館時間を過ぎていて、訪問することはできなかったのです。5月14日が交通博物館の最後の日とのことですが、それにしても加倉井さんのこの「見どころガイド」は、手もとで保存版にでもしておきたいものです。


 ・・・で、疲れて家に帰って新聞を読んでいると、思いがけないところで「銀河鉄道の夜」という小さな活字を目にしました。朝日新聞の書評欄で最相葉月さんが、『ザ・サーチ/グーグルが世界を変えた』という本を評している文章の中に、「『銀河鉄道の夜』の「地歴の本」のごとく全世界をインデックスしたいという欲望渦巻く時代に信頼は築けるか。・・・」という一文が、不意に現れたのです。
 「銀河鉄道の夜 初期形三」に出てくる「地歴の本」のイメージは確かに印象的で、私も「当サイトについて」の中で引きあいに出したりしました。最相葉月さんはこれを、はかり知れないほどの情報が集積されつつある World Wide Web という世界と、それに対する人間との関係の比喩として、用いられたわけです。

 もしも今日「交通博物館」に入れていたら、銀河鉄道を連想させるような大正時代の客車や機関車も見られたと思うと残念ですが、帰宅してからネットを開くとちょうどその昔の写真や説明を見られてしまうというのは、やはりこれは「地歴の本」ですね。