80年目の「異途への出発」(1)

 例によって、京都から花巻まで行ける新幹線の最終便、のぞみ144号に乗り込みました。一時よりは少し日が長くなった感じですが、 京都駅を発つ午後6時前には、もうほとんど暗くなっていました。たまたま車内でずっと読んでいた小説のなかに、 主人公やその友人が大阪の下町にある行きつけの中華料理屋で、しきりに「レバニラ炒めと冷えたウォッカ」を注文する情景が出てくるもので、 なんとなく一度この組み合わせを試してみたくなってしまいました。

 東京駅であわただしく乗り換え、午後11時すぎに新花巻駅に着いてみると、駅前の広場にはあちらこちらに残雪が見られました (下写真)。タクシーの運転手さんによれば、この大晦日と元日に積もった雪が、まだ残っているのだそうです。「月の惑みと/ 巨きな雪の盤とのなかに/あてなくひとり下り立てば・・・」という「異途への出発」の冒頭から、 いちおう雪を期待してやって来たのですが、なんとかその期待はかなえられました。

 花巻駅前のホテルに入ると、ロビーは明かりも落ちてがらんとしていました。 一人で退屈そうにしていたフロント係の人にチェックインをお願いして部屋に入り、明日にそなえて今日は早く寝ておくことにします。