賢治像受難

いたずらされた盛岡市材木町の賢治像 「それにしても、今度の事件はほんとうにご災難でしたね。」
 「ほんたうにみんなの幸のためならば、ぼくのからだなんか百ぺん灼いてもかまはない。」
 「あ・・、そうですか。でも、こんな悪質ないたずらに対しては腹も立つでしょう。」
 「決シテ瞋ラズ。」
 「うーん。でも、あなたのファンは、みんなとても怒っています。」
 「なみだなくして人を責めるのはもとめるのです。」
 「???。じゃ、あの、よければ事件の時の様子を教えていただけませんか。」
 「自分の中で鐘の烈しい音がする。何か物足らぬ様な怒ってやりたい様な気がする。その気持がぼうと赤く見える。赤いものは音がする。だんだん動いて来る。燃えてゐる。やあ火だ、然しこれは間違で今にさめる。や音がする、熱い、あこれは熱い、火だ火だほんたうの火、あついほんたうの火だ、あゝこゝは火の五万里のほのほのそのまんなかだ・・・。」
 「ああ、まだ生々しく辛いことをお聞きしてすみませんでした。お許しください。では最後に、こんなことをやった人に対して言っておきたいことがあればどうぞ。」
 「ツマラナイカラヤメロ。」