「農民芸術概論綱要」碑
1.テキスト
世界がぜんたい
幸福に
ならないうちは
個人の幸福は
ありえない
宮澤賢治
疾翔大力
2.出典
「農民芸術概論綱要」
3.建立/除幕日
2010年(平成22年)4月4日 建立/除幕
4.所在地
東京都豊島区上池袋2-45-15 上池袋さくら公園
5.碑について
東京都豊島区は、その形が「ふくろうが羽を広げた様子に見える」ということで、ふくろうを「区の鳥」と定めているということです。(右図は豊島区のサイトより)
池袋駅東口にあって、待ち合わせ場所としてよく使われるという「いけふくろう」の像が最も有名ですが、それ以外にも区内にある様々なふくろうにちなんだオブジェは、豊島区による「街の中のふくろうたち」というページで見ることができます。
ところで、ふくろうをシンボルにしている自治体と言うと、花巻市も2007年3月にふくろうを「市の鳥」に定めていて、ちょっとしたご縁を感じるところです。そして実際、そのようなゆかりにちなんで、2010年4月に「花巻ふくろうの会」が、豊島区にふくろうの像を寄贈しました。
それが、豊島区の「上池袋さくら公園」にある、このふくろうの像です。2010年4月4日に行われた除幕式は、豊島区長が迎える中、花巻市長、宮沢賢治記念館副館長も出席して執り行われたということです。
ふくろうの像は、賢治の童話「二十六夜」をモチーフとしており、台座の下端には「疾翔大力」という、この童話において尊崇されているふくろうの「菩薩」の名前が記されています。高さ2.5mのところから見下ろす「疾翔大力」の表情は精悍で、悟りを表しているかのようでもあります。
ふくろうの止まり木の下にある石の球体は、「地球」を表しているのだということで、方形の台座正面に記された賢治の言葉の、「世界がぜんたい・・・」という部分も連想させます。
台座の側面には、「花巻ふくろうの会」からの寄贈を記した言葉が記されていて、こちらのふくろうの絵には、ちょっとユーモラスな雰囲気も漂っています。月の輪郭?が見えるところは、あの賢治によるミミズクのイラストをモチーフにしている感じもしますね。しかし「ミミ」がないので、やはりこれはミミズクではなく「ふくろう」です。
像の横には、下のような説明板が立てられています。
宮澤賢治と花巻市の鳥「ふくろう」
宮澤賢治は1896年に、現在の岩手県花巻市に生まれました。
「雨ニモマケズ」や、童話「銀河鉄道の夜」などで知られる賢治
は、ふるさと岩手を理想郷「イーハトーブ」と呼び、37歳で亡くな
るまでに、たくさんの詩や童話を書いています。
賢治作品に何度も登場する「ふくろう」は、花巻市のシンボルの鳥
であり、童話「二十六夜」は代表作です。舞台は花巻市内を流れる
北上川のほとりで、集うふくろうたちを前に、ふくろうの僧が「疾
翔大力」 について説法します。疾翔大力とは、賢治創作の菩薩の別
号で、物語の最後では二十六日の月の中に三尊の仏として、その姿
を現します。
農業指導にその身を捧げた賢治は、「農民芸術概論綱要」の中で
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」
と記しています。あらゆる生命の「ほんとうの幸福」を求め続けた賢
治の祈りを、花巻から飛び立つ「ふくろう」に託します。岩手県花巻市
このモニュメントは、東京都豊島区と岩手県花巻市という遠く離れた二つの場所を、「ふくろう」と「宮澤賢治」が取り持った所縁の、シンボルというわけですね。