「花散りはてし盛岡」歌碑
1.テキスト
せはしくも花散りはてし盛岡を
めぐる山々雪はふりつゝ
宮沢賢治
2.出典
歌稿〔A〕 485
3.建立/除幕日
1996年(平成8年)12月23日 建立/12月25日 除幕
4.所在地
盛岡市湯沢1-88 都南つどいの森 都南老人福祉センター前
5.碑について
この歌碑の文字は、賢治の妹 とし子 さんの筆跡を写刻したものです。彼女が日本女子大学を卒業して、兄賢治の短歌を罫紙に清書した「歌稿〔A〕」と呼ばれる文書から、とられました。
賢治がこの短歌を詠んだのは、1917年4月、高等農林学校3年に進級した頃です。「箱ヶ森」の短歌を詠んだのとほぼ同じ時期でした。
とし子さんの筆跡は、きびきびとして大人びていると同時に、独特の意志の強さのようなものも感じさせます。賢治の筆跡と似ているところもありますが、全体の印象は、賢治の字がちょっとまるみを帯びてポップな感じがするのとは対照的で、とても利発で知的な印象です。
短歌は、おそらく4月下旬ごろの情景かと思われます。北国の短い春を、あわただしく桜が咲いては散り、またそこに雪が降ったりするアイロニカルな気候を詠んでいます。 この頃の賢治の歌にしては、単純で素朴な叙景です。
歌碑は、盛岡市の南方の赤林山の裾野にある、「都南つどいの森」という多目的ゾーンの一角に建てられています。キャンプ場があったり、サイクリングターミナルがあったり、歴史民俗資料館や種々のスポーツ施設があったりする地区ですが、歌の内容にふさわしく、盛岡市街や周囲の山々を見晴らせる高台にあります。
「サイクリングターミナル」という名前がついているので、盛岡市街から軽い気持ちで自転車で向かったのですが、この歌碑の所まで登るのは、かなりハードな坂道の連続でした。
都南つどいの森 キャンプ場