「農民芸術概論綱要」碑

1.テキスト

われらの前途は
輝きながら嶮峻である
嶮峻のその度ごとに四次芸術は
巨大と深さとを加える

        宮澤賢治

2.出典

「農民芸術概論綱要」

3.建立/除幕日

1978年(昭和53年)3月17日 除幕

4.所在地

花巻市若葉町1 市立花巻中学校東門

5.碑について

 宮澤賢治は、農学校を辞めて羅須地人協会を興してまもなく、これから仲間となる若い農民たちと自分自身に向けた宣言文のような、「農民芸術概論」を書きました。
 碑文は、その結論部分の一節です。

 これだけでは、「四次芸術」とは何のことかわかりませんが、この文は、その少し前に出てくる、「おお朋だちよ いっしょに正しい力を併せ われらのすべての田園とわれらのすべての生活を一つの巨きな第四次元の芸術に創りあげようでないか」、「巨きな人生劇場は時間の軸を移動して不滅の四次の芸術をなす」という部分を受けたものです。
 すなわち賢治は、農民が生きて働くということそれ自体――この三次元の世界における人間の労働が、時間軸を加えた四次元空間において描く軌跡そのもの――を、そのまま一つの「芸術」と考えて、「四次芸術」と呼んだのです。

 新しい仕事に着手する時に賢治は、行く手にどんな困難があろうともあくまで果敢に挑戦しようとする気概を見せました。
 上記の碑文は、この4年前に農学校に就職してまもない頃に書いた「精神歌」の歌詞の一節、「ケハシキタビノ ナカニシテ ワレラヒカリノ ミチヲフム」という部分と、まさに共通するイメージを内包しています。
 どちらも、新たな環境のもとで後進たちに向かって、「光の中で険しい道を進んで行こう」と呼びかけるものです。


花巻市立花巻中学校