「早春」詩碑

1.テキスト

まことひとびと
     索むるは
青き gossan 銅の脈
わが求むるは
    ま
       こ
雨の中なる
    眞

2.出典

「早春(習字稿)」(文語詩稿 一百篇」)

3.建立/除幕日

1950年(昭和25年)3月13日 建立/3月19日 除幕

4.所在地

花巻市若葉町3 ぎんどろ公園

5.碑について

 碑文は賢治の自筆稿の筆跡から採られていますが、賢治の一般の草稿のように推敲の目的で書かれたものではなく、毛筆で字の練習をしたような跡で、『【新】校本全集』でも「習字稿」と呼ばれています。下の拡大写真のように、「まことの/まことの/ことば/ことば」「眞言なり/眞言なり」のように、同じ句が繰り返されています。
 石に文字を彫った職人さんは、英字の筆記体など扱うのは初めてだったので、「生まれて初めて横文字を刻むのには閉口した」と言っていたとのことです。

 「gossan」とは、地質学用語で「鉱床の露頭」のことで、岩壁のなかでそこだけが褐色や青色に染まって見えるために、鉱脈を発見する手がかりになるものだということです。
 高等農林学校の研究生だった頃、賢治は地質調査のために岩手県内の各地を歩きまわっていましたが、この作品は、雨の中をどこかの小さな鉱山駅に立ち寄った時の体験をもとにしていると思われます。

 碑は1950年に建立されており、賢治の石碑としては三番目に古いものです。碑全体に、最近のものにはない一種の品格が感じられます。


碑面拡大図