賢治学会夏季特設セミナー(1)

 京都も大阪も朝から暑さがひとしおですが、天気はよくて、飛行機の窓からは雪をかぶった鳥海山なども見えました。

 お昼前に花巻空港に着きましたが、やっぱり関西と同じ暑さです。伊丹で出会った森羅情報サービスの渡辺さんと一緒に、 イーハトーブ館までタクシーで行きました。
 午後2時のセミナー開会までには少し時間があったので、2階の図書室をのぞいたり、南斜花壇を歩いたりした後、山猫軒で昼食をとりました。 山猫軒も、夏休みの土曜日のお昼とあって、猫(?)の手を借りたいような忙しさです。

 さて、今回の夏季特設セミナーの第一日目は、まず信時哲郎さんの講演「宮沢賢治と電子メディア2002」で始まりました。 信時さんは、「近代文学ページ」 などで以前から賢治研究に関して厖大な情報を発信しておられますが、賢治とメディアの歴史を、スマートに講義してくださいました。 宮沢賢治が、同人誌→雑誌投稿→単行本出版と、順番に表現媒体をメジャー化させてきていたのに、ある時点から方向を反転して、 謄写版による手づくりを考えたり、最終的には文語詩という形式を通じて「声」によるコミュニケーションを目ざそうとしたという、 彼の軌跡のお話が印象的でした。それにしても賢治の生涯というのは、その切り口によって、さまざまな興味深い曲線を見せてくれると思います。

 次は、杉浦静さんと渡辺宏さんによるワークショップで、「〔月のほのほをかたむけて〕」の推敲過程を、 電子メディアを使ってたどるという試みでした。ここで、私が作っておいた推敲過程のフラッシュファイルも使っていただいたのですが、 何よりも杉浦さんのレクチャーが面白くて、賢治の推敲の背景にある深い心理や意味の流れまでもが、 草稿から浮かび上がってくるような心持ちでした。(下は杉浦さんがそのフラッシュを映しているところ)

 このあと渡辺さんが、現在インターネットで見られる賢治関連ホームページの紹介を、関西弁の軽妙な語り口で披露されて、 一日目のセミナーは終わりました。

 終了後の懇親会は、「第2回宮沢賢治をたべる会」として、イーハトーブ館の前のスペースで食事会がありました。野外でみんなで、 「藁のオムレツ」や「六寸ぐらゐのビフテキ」や「電気葡萄酒」などをいただいたのですが、それにしてもさすがに夕方になると、 昼間の気候が信じられないような涼しさになるところは、やっぱり北国に来た感じです。

 今日のセミナーで使用したフラッシュファイルは、また近いうちに当サイトで公開しようと思っています。