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「雨ニモマケズ」木碑

1.テキスト

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
欲ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラツテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイイトイヒ
北ニケンクワヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボウトヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
         宮 沢 賢 治

2.出典

〔雨ニモマケズ〕」(『〔補遺詩篇 II〕』)

4.所在地

福岡県筑後市大字一条1373 筑後工藝館 裏庭

5.碑について

 広々とした筑後平野のなかほど、筑後市の一条という地区に、「筑後工藝館」はあります。JRで行くと、鹿児島本線の西牟田という駅で降りて、のどかな田園地帯を横切り、東の方角に20分ほど歩いたところです。
 ここには手作りの工芸品などを展示してあるそうなのですが、その一角に賢治の「雨ニモマケズ」の木碑があると聞いて、ある秋の一日に見に行ってきました。

 筑後工藝館は、表から見ると白壁の平屋で、隣には「風穴」という名前の喫茶店も併設されています。
 扉を開けて、出て来られたご主人に、「こちらに宮澤賢治の『雨ニモマケズ』の碑のようなものがありますか」と聞いてみたのですが、しばらく考えて、「そのようなものはありません」とのお答えでした。でも、「裏庭に種田山頭火の句碑ならあります」ということでしたので、「せめてそれだけでも」と拝見させていただくことにしました。
 裏庭に案内してもらって、山頭火の句碑「春風の鉢の子一つ」を見ていたのですが、ふと脇の木陰に目をやると、そこには「雨ニモマケズ」が書かれた木の看板のようなものが立っているではありませんか。
 それでご主人に言って、写真を撮らせていただいた次第です。

 しかし、いったいどういう経緯でこんな所に「雨ニモマケズ」があるのか、ご主人に尋ねてみると、この裏庭には萱ぶきの家屋(下写真)があるので、「野原ノ松ノ林ノ蔭ノ/小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ…」という一節にちなんで、ここに木碑を建てたのだそうです。

 温暖な九州の、筑後川下流の肥沃な大地、ここは賢治が身を置いた農業環境とはまたかなり違っているのでしょうが、こんなところにも「雨ニモマケズ」を木碑にして立てている人がいるとは、ちょっとした感慨がありました。


木碑に向かい合って建つ萱ぶきの家屋