「われらひとしく丘に立ち」詩碑

「われらひとしく丘に立ち」詩碑

1.テキスト

       宮沢賢治

われらひとしく丘に立ち
青ぐろくしてぶちうてる
あやしきもののひろがりを
東はてなくのぞみけり
そは巨いなる鹽の水
海とはおのもさとれども
傳へてききしそのものと
あまりにたがふここちして
ただうつつなるうすれ日に
そのわだつみの潮騒の
うろこの國の波がしら
きほひ寄するをのぞみゐたりき

2.出典

〔われらひとしく丘に立ち〕(下書稿(三)手入れ)」(「文語詩未定稿」)

3.建立/除幕日

1988年(昭和63年)12月13日 建立/除幕

4.所在地

宮城県石巻市日和ヶ丘 日和山公園

5.碑について

 詩碑は、旧北上川が太平洋に注ぐ河口を見おろすところ、石巻市南部の小高い丘にあります。

 賢治は盛岡中学四年の1912年、修学旅行でこの場所を訪れ、生まれてはじめて海を見たということです。
 この時に賢治は、「まぼろしとうつつとわかずなみがしら/きほひ寄せ来るわだつみを見き。」(歌稿〔B〕10)という短歌をつくっており、これを晩年に改作して、上の文語詩になりました。

 物心ついてからずっと北上川に親しんできた賢治が、ちょうどその北上川が海と出会う場所で、自分もはじめて海と出会ったというのは、これも何かの縁のような気がします。

 この日和ヶ丘という丘は、むかしの城址だということで、『奥の細道』にちなんだ芭蕉と曾良の銅像も立っていました。


日和山公園より旧北上川河口を望む