「塵点の劫」等 鐘銘

1.テキスト

塵点の
 劫をし
   過ぎて
  いましこの

妙のみ法に
  あひまつ
     りしを


(いたつき)のゆゑにもくちん
         いのちなり
 みのり
    に棄てば
      うれしからまし

2.出典

「雨ニモマケズ手帳」(鉛筆挿し)
「絶筆短歌」

3.建立/除幕日

1956年(昭和31年)2月15日 建立

4.所在地

埼玉県白岡市白岡941 正福院

5.碑について

 JR東北線の白岡駅から、西の方角へ徒歩15分ほどのところに、正福院という真言宗のお寺があります。
 このお寺の梵鐘に、「鐘銘歌」というのでしょうか、宮澤賢治の短歌が二首、刻まれています。

 二首目に出てくる「みのり」という言葉には、稲の「稔り」と、「み法」とを掛けてあるのだと思いますが、この「み法」がキーワードとなっているところが、ここに採られた二首の短歌の共通点ということになります。「妙のみ法」ですから、「法(=仏陀の教法)」のなかでも、とくに妙法蓮華経を指していると考えてよいのでしょう。

 しかし、真言宗のお寺なのにどうして法華経を讃える歌を鐘銘歌として選んだのか、ちょっと不思議なところです。
 この他にも、境内には室生犀星の詩碑もありましたから、住職さんか誰か文学好きな方がおられたのでしょうか。


正福院 鐘楼