「セロ弾きのゴーシュ」碑
1.テキスト
「先生、そうお怒りになっちゃ、おからだにさわります。
それよりシューマンのトロイメライをひいてごらんなさい。
きいてあげますから。」
「生意気なことを云うな。ねこのくせに。」
セロ弾きはしゃくにさわってこのねこのやつ
どうしてくれようとしばらく考えました。
「いやご遠慮はありません。どうぞ。
わたしはどうも先生の音楽をきかないと
ねむられないんです。」
宮沢賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」より
2.出典
童話「セロ弾きのゴーシュ」
3.建立/除幕日
1985年(昭和60年)3月14日 建立
4.所在地
花巻市矢沢 新花巻駅前広場
5.碑について
新幹線を新花巻駅で降りると、駅前の広場でこの彫刻碑が迎えてくれます。全体が花崗岩でできていて、幅が5mもある、どっしりと大きなオブジェです。
1985年3月の新花巻駅開業とともに、その駅舎が「銀河鉄道の夜」を連想させるような建築になっているのと対比させ、やはり賢治の代表作として「セロ弾きのゴーシュ」が題材に選ばれ、建立されたのだということです。
石造りのレリーフ彫刻になったゴーシュのまわりには、やはり見事なレリーフで、「猫」、「かっこう」、「狸の子」、「野ねずみの親子」というこの作品に登場する動物たちが配置されています。 それぞれのキャラクターは、物語の中で印象深いアイテムと一緒に描かれています。
ゴーシュはもちろん「セロ」を持ち、上の写真ではわかりませんが、流れるように刻まれた楽譜は、猫がリクエストしたシューマンの「トロイメライ」です。猫は、ゴーシュの畑から勝手に取ってきた「トマト」を手に、かっこうは、後でぶつかってしまう「窓」を背景に、狸の子は、太鼓の「ばち」に使う棒きれを持って、そして野ねずみの親子は、ゴーシュにもらった一切れの「パン」を前にしています。
向かって右上の緑青いろをした金属板(右写真)には、上の「テキスト」欄にある童話の一場面、三毛猫が現れてゴーシュとやりとりするところが刻まれています。
この碑独特の面白い趣向として、人が碑に近づくとセンサーが感知して、チェロによる演奏で「星めぐりの歌」と「トロイメライ」が自動的に流れるという仕掛けがしてあります。