金策
一九二七、六、三〇、
青びかりする天弧のはてに
うつくしく町はうかんで
この六月の金策は
もうきっぱりと尽きてしまった
いっそ楽器やすこしの本や
勝手にしろと白堊で書いて
おれは遠くの義理のいらないところへ行かう
甘く熟してぬるんだ風と
なにか小さなモーターの音
この花さいた(約三字空白)の樹だ
梢いっぱい蜂がとび
その膠質な影のなかを
月光いろの花瓣がふり
向ふでは町がやっぱり
ひかってそらにうかんでゐる
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