一〇七七

     金策

                  一九二七、六、三〇、

   

   青びかりする天弧のはてに

   うつくしく町はうかんで

   この六月の金策は

   もうきっぱりと尽きてしまった

   いっそ楽器やすこしの本や

   勝手にしろと白堊で書いて

   おれは遠くの義理のいらないところへ行かう

   甘く熟してぬるんだ風と

   なにか小さなモーターの音

   この花さいた(約三字空白)の樹だ

   梢いっぱい蜂がとび

   その膠質な影のなかを

   月光いろの花瓣がふり

   向ふでは町がやっぱり

   ひかってそらにうかんでゐる

   

 


   ←前の草稿形態へ(1)

   ←前の草稿形態へ(2)

 

次の草稿形態へ→