一〇七七

     金策

                  一九二七、六、三〇、

   

   青びかりする天弧のはてに

   うつくしく町がうかんでゐる

   かあいさうな町よ

   金持とおもはれ

   一文もなく

   一文の収入もない

   そしてうらまれる

   辞職でござる

   そこで世間といふものは

   中間といふものをゆるさない

   なにもかもみんないけない

   悪口、反感、

   十八や十九でおとなよりも貪慾なこども

   なにもかもみんないけない

   おれは今日はもう遊ばう

   何もかも

   みんな忘れてしまって

   ひなたのなかのこどもにならう

   甘く熟してぬるんだ風と

   なにか小さなモーターの音

   この花さいた(約三字空白)の樹だ

   梢いっぱい蜂がとび

   その膠質な影のなかを

   月光いろの花瓣がふり

   向ふでは町がやっぱり

   ひかってそらにうかんでゐる

   

 


   ←前の草稿形態へ

次の草稿形態へ(1)→

次の草稿形態へ(2)→