金策
一九二七、六、三〇、
青びかりする天弧のはてに
うつくしく町がうかんでゐる
かあいさうな町よ
金持とおもはれ
一文もなく
一文の収入もない
そしてうらまれる
辞職でござる
そこで世間といふものは
中間といふものをゆるさない
なにもかもみんないけない
悪口、反感、
十八や十九でおとなよりも貪慾なこども
なにもかもみんないけない
おれは今日はもう遊ばう
何もかも
みんな忘れてしまって
ひなたのなかのこどもにならう
甘く熟してぬるんだ風と
なにか小さなモーターの音
この花さいた(約三字空白)の樹だ
梢いっぱい蜂がとび
その膠質な影のなかを
月光いろの花瓣がふり
向ふでは町がやっぱり
ひかってそらにうかんでゐる