牛
一九二四、五、二二、
一ぴきのエーシャ牛が
草や地靄に角をこすってあそんでゐる
うしろではパルプ工場の火照りが
けむりと雲を焦がしてゐるし
低い砂丘の向ふでは
海がどんどん叩いてゐる
しかもじつに掬っても呑めさうな
黄銅いろの月あかりなので
牛はからだいちめん
すっかりアマルガムになって
こんどは角で柵を叩いてあそんでゐる
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