倒れかかった稲のあひだで

   ある眼は白く忿ってゐたし

   ある眼はさびしく正視を避けた

   そして結局おれのたづねて行くさきは

   地べたについたあのまっ黒な雲のなか

   あのまっ黒な雲の中の

   ぬれた小さな石に座って

   おれも死に、

   母も死に

   村々も町も衰へるだけ衰へつくす

   たゞそのことを考へやう

   ははは

   紫いろのいなづまが

   みちの粘土をかすめれば

   一すじ小さなせゝらぎが

   わだちのあとを走るのだ

   それもたちまち風が吹いて

   稲がいちめんまたしんしんとくらくなって

   あっちもこっちも

   ごろごろまはるからの水車だ

 

   百万遍の石塚に

   巫戯化た柳が一本立つ

 

 


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