〔倒れかかった稲のあひだで〕
倒れかかった稲のあひだで
ある眼は白く忿ってゐたし
ある眼はさびしく正視を避けた
……地べたについたあのまっ黒な雲の中
地べたについたまっ黒な雲の中……
それだからといって
いまいなづまの紫いろ
みちの粘土をかすめて行けば
幅十ミリの小さな川が
みちのくぼみを衝いて奔り
あらゆる波のその背も谷も
また各々のその皺さへも明らかなのだ
……その背も谷も明らかなのだ……
ごろごろまはるからの水車
もう村々も町々も、
衰へるだけ衰へつくし
中ぶらりんのわれわれなんどは
まっ先居なくなるとする(中断)